悪戯っ子襲来
おはようございます。夜にできなかったので早朝の更新です。
全員がスキルを習得した頃には日が落ちかかっていた。アザーはずっと落ち込んだままである。
「まあまあ、そう落ち込むなって…ククッ」
「き、きっとこの先役に立つよ…フフフッ」
「そ、そ、そうですよ!すごい輝きでしたし!…ンクク」
アザーを励ますように声をかけるメンバー。しかし笑いを隠すことはできていなかった。セイカに至っては
「…ブフォッ…ククク…フフフッ」
というようにずっと笑い続けていた。流石のアザーも
「おい!笑いすぎや!特にセイカ!いつまで笑ってんねん!!!」
とセイカに言い放った。あれだけ苦労したのにこの仕打ちは流石に可哀想だとセイカも思ったのか、頑張って笑いを堪えていた。そんなセイカを見てアザーは少し落ち着きを取り戻したのだが、ルーペはお構い無しに追い打ちをかけた。
「せっかく会得したのに光るだけって…プークスクス」
アザーは言い返すのも疲れたと言わんばかりに黙り込んだ。
スキルを会得して以降、総長はずっと笑い物にされていた。
夕方ー
「よし、今日はここで寝よか!」
「そうだね、日も落ちかけているしこれ以上は危険だね。」
と寝る場所を決め、野営の準備を始めていた。
「アーナさんは初めての野宿やけど、大丈夫なんか??」
アザーが少し心配そうにアーナに声をかける。そんな心配とは裏腹にアーナは
「はい!私、どこでも寝れますから!」
と元気に応えた。この子は心配なさそうだなど皆は安心した。
そうこうしているうちに夜になり、ルーペの食事を食べ終えて少し団欒していた。そんなときふと、アーナが発言した。
「そう言えば、私から皆さんにお願いがあるんですけど、いいですか??」
「お?なんやなんや?」
「何でも言ってくださいな。可能な限り応えますんで!」
「あの…えっと…そのぉ…わ、私のことも呼び捨てで読んでほしいななんて思いまして…。ダメ、ですか??」
「僕は大歓迎だよ、アーナ!」
「俺もやわ!てか、むしろその方がよかったし!」
「拙者もぜひそう呼ばせてもらうわ!けど、あの2人は拙者らに対しても呼び捨てじゃないから厳しいかと…。」
そう言いながら総長とアーナに見られたセイカとルーペは目を逸らした。
「あの2人は基本呼び捨てとかが苦手やからな〜。悪く思わんといたってな!」
「はい!残念ですけど、仕方ないですもんね!」
セイカとルーペの意外な弱点を見たなとアーナは思っていた。
そんなやり取りを終えたあと皆はそれぞれのテントに歩を進めながら
「ふわぁ〜。そろそろ疲れたから寝るわ。」
「拙者も寝よ。」
「うん!じゃあ、そろそろ火消すね!」
「おやすみなさーい!」
「…おやすみなさい。」
「おやすみなさいませ〜」
などと軽いやり取りをした後、眠りについた。
翌朝、皆は起きて朝食を取っていた。すると木の影から怪しい人影がこちらを覗いていた。
「ふっふっふ。」
シュバッ!!!
「あれ?僕のご飯誰か食べた??」
「食べてへんで?」
「俺も自分のしか食べてない」
「あれー?おかしいな??」
物音とともに食べ物が消えた。急なことで皆の表情には混乱の色が表れている。
シュバッ!!!
「え?あれ?私のご飯も無くなっちゃいました。」
「ふむふむ。これは中々いけるな〜」モグモグ
シュバッ!!!
そんなことが繰り返し起こった時、セイカが何かに気づいた。
「…誰か居る。」
その言葉にルーペは少し苛立ちながらも、落ち着いた声色で
「ですね。セイカさん、いっちょやっちゃってください。」
そんなやり取りを見ていた者は焦る様子もなく自らの考えを口にしていた。
「ふふふ。バレてしまったけど、誰にも私の場所はわかるまい。」
そう考え逃げずに身を潜めることを選択したのだが、それが失敗であった。
「氷の息吹」
セイカの唱えたスキルにより辺り一面が凍った。それと同時に鈍い落下音がした。
「わぁっ!!!いてて。」
声と共に木から1人の少女が落ちてきた。白髪のツインテール姿、背丈は少し低めだが年は近いことが見て取れる。その少女は引きつった笑みを浮かべながら一行を伺っている。
「おやおや、こんな可愛らしい子が犯人だったなんてね〜」
「俺らにこんなことしたらどうなるか、教えたらなあかんな〜」
悪ふざけの通じないクロと、短気なドグは怒りを滲ませながら拳を鳴らしていた。その姿に怯えた少女はすぐさま土下座しながら
「ひ、ヒィ…すみませんでしたぁぁああ!!!」
と謝っていた。そんな様子を見かねたアザーとアーナはクロとドグを宥めつつ
「クロ、ドグ、その辺にしといたれよ」
「そうですよ!悪戯のつもりだったんでしょうし、許してあげてください!」
と言った。その言葉に少し怒りが収まったのかクロは冷静になり、少女に向かい合った。
「総長とアーナがそう言うなら…まあ、大目に見ようか。」
クロの言葉に安堵した少女は土下座をやめて、一行を見ている。アザーは少女に
「こんなことしたらあかんで??」
優しく微笑みかけたそのとき、
「今だ!!!ぅえいっ!!!」
悪戯っ子は総長の剣を奪い、そのまま走っていった。
一瞬の沈黙ののち、
「…。おんどりぃやぁ、あんのクソガキャァァアア!!!待てやごらぁぁあああ!!!」
アザーは叫びながら走り出した。
「そ、総長さん!?」
アーナは驚きと戸惑いの色を滲ませながら声を上げた。
「仕方ない。追おうか。」
クロの号令で一行はアザーのあとを追って町まで向かった。