落し物
本日の更新です。時間は日によってバラバラです。
「俺らが行くのはなんてところやったっけ?」
昨日の話を聞いていたのかと思わず問いただしたくなるようなことをドグは訪ねていた。
「ドグやん、確認はしときましょうよ。」
「今日行くのは、桜の国だよ。なんでも1年中咲いている幻の桜がある国らしいよ。」
「…桜、楽しみ。」
「よっしゃ!じゃあ、モンスターを狩りつつ、目的地までのんびり行こか」
「そうだね!」
「そう言えば、昨日言うてた仲間を増やすって、具体的にはどんな仲間を増やすん?」
「うーん…せやなぁ。拙者たちにまず必要な人材と言えば、回復系スキルを持っている人とルーペ以上に料理ができる人やな。」
「確かに、私魚料理以外はできないので、そのうち飽きちゃいますしね。」
「そうやねんな。美味しいんやけど、そればっかりになるとなぁ。」
「…まずは料理人?かな?」
「とりあえずは最優先で候補にするけど、面白そうなやつやったら気にせず仲間にしよ」
「その辺はアザ…。総長に任せるよ?」
「そやな!まあ、変なやつ入れたらぶっ飛ばすけどな」
「プレッシャーがえぐいな、これ」
そんな風に新しい仲間について話しながら桜の国を目指していた。
タッタッタッ。ドンッ。
「きゃっ」
桜の町を目指して歩いていると突然クロに赤髪で小柄な一言で言うと猫のような少女がぶつかった。その弾みで少女は尻もちを着いた。
「わっ!ごめん、大丈夫かい?」
「す、すみません。急いでいたもので。」
「いやいや、僕の方こそよそ見していたよ。」
「で、では!私は急いでいますので、失礼します。」
「うん!気をつけてね!」
タッタッタッ。
そんなやりとりをしてから少女を見送っていると、セイカが何かに気付いた。
「…?これ、あの子のかな?」
「これってあれやんな?」
「どう見ても冒険の証ですね。えーっと、名前は…【アーナ】って書いてありますね!」
「…出身は桜の国って書いてある。」
「ちょうどいい!拙者たちもそこへ向かうことだし、届けてあげよ。」
ー三日後ー
少し不思議な出会いを経て、夕刻。一行は桜の国の門の前まで来ていた。
「おお!桜だ!」
「むっちゃ綺麗やな。」
「君たち、桜の国へ入国希望か?すまないが、冒険の証を確認させてくれないか?」
「近頃、物騒なことが多いもんでな。来ていただいて早々で申し訳ないが、頼むよ。」
「あ、はい。どうぞ!」
「はい、確かに。お返しします。」
「それでは、ようこそ!桜の国へ!」
「ん?そう言えば、僕たちに入国審査をしたってことは他の人にもしてるってことですよね?」
「もちろんです。どうかされましたか?」
「あ、いや…」
「…この国の子の冒険の証を拾ったの。」
「ん?ああ、アーナちゃんか!彼女なら問題ないよ!」
「この子は外に出ることが多くてね。私たちも皆顔なじみだから、中に入れているよ」
「それならよかった!で、この子はどこにいますか??」
「その子なら、広場にある酒場に居るよ」
「ありがとうございます。それじゃ。」
「いえいえ」
「クロ、お前どこで礼儀作法なんて学んだんだよ?」
「本当ですよ。クロさんのくせに。」
「なんで僕が礼儀作法ができると批判がくるんだよ!?」
「お!あれちゃう?酒場って!」
「…大きいね。」
見るからに繁盛している酒場からは、皆が盛り上がる声が聞こえてきていた。
ガチャ
「はーい!いらっしゃーい!」
ドアを開けて中に入ると元気な声が聞こえた。声の主はアーナだ。
「ん?ああっ!昼間はどうもすみませんでした!改めまして、私この店の娘のアーナと申します!」
「いやいや、こちらこそ。拙者たちも紹介するね!まず、拙者がアザーと言います。さっきぶつかったのがクロ、口が悪いツンツン頭がドグ、スラッと背が高くて無口なのがセイカ、目をかくしてるのがルーペだよ!」
「あ、そうそう。はいこれ。多分僕とぶつかったときに落としちゃったんだと思うよ。」
「ああ!無くしたと思っていた冒険の証!ありがとうございます!」
「いやいや、お礼ならセイカに言ってあげて。」
「セイカさん、本当にありがとうございます!助かりました。」
「…気にしなくて、いい。」
「ごめんなさいね。セイカさん、人見知りなんですよ。」
「いえいえ、本当にありがとうございました!」
「あ、そうや!ここら辺で安い宿屋とかない?」
「そうそう、拙者も聞こうと思ってたんよ」
「宿をお探しですか?でしたら、ここにお泊まりください!」
「え?でも、ここは酒場じゃないの??」
「うち、2階は宿になってるんですよ!普段は酔いつぶれた方に泊まっていただいてるんですけど、今日は空きもありますし、よかったらどうですか??」
「いやらしい話なんですけど、いくらですかい??」
「残念なことに僕たち本当に所持金が少なくてさ」
「お金でしたら結構です!冒険の証を届けてくださったお礼ですので!」
「「「「「ほんとに!!??」」」」」
「助かったぁー。」
「ほんまにな。アーナ、ありがとう!!!」
「…ありがとう。。。」
「喜んでいただけてよかったです」
アーナは笑顔でそう言った。
アーナに案内され、泊まる部屋のなかへ入り、各々くつろぎながら次の予定を立てていた。
ードーンー
夜、皆が寝静まった頃、突然爆音が聞こえた。
「なにごと!?」
「なんやなんや?びっくりした」
「総長、静かに寝てくださいよ」
「拙者じゃねーよ!」
「…外が騒がしい。」
ギャァアアアオオオオ!!!
魔物の鳴き声のようなものが響き渡ってきた。
「お願い!静まって!!!どうしたの?ペガサス!」
「アーナさん!大丈夫かい??」
「これは…ペガサスですか?」
「なんでこんなんがここに?」
「ペガサスは古来よりこの国の守り神として住み着いているのです。」
「…守り神がどうして暴れるの?」
「わかりません。近年このペガサスがよく暴れるようになったのです。」
「と、とにかく、アーナさんを助けないと!」
5人は武器を手に取った。しかし、すぐさま兵士に止められてしまった。
「だめです!ペガサスは傷付けてはいけません!傷付ければこの国に災いが起こってしまいます!」
「だからって、拙者たちは女の子を犠牲になんてできない!」
「御安心ください。アーナさんはペガサスを鎮めることができる唯一の方なんです!」
「ペガサス、話を聞いて?」
ギャァアアオオオオオオ。ペガサスは尚暴れている。
「ペガサス!…ごめんね?少し眠ってて。」
「眠りへの誘惑」
アーナの唱えたスキルにより、ペガサスは眠った。しばらくして目を覚ましたペガサスはどこかへ行ってしまった。
その後、皆は疲れを癒すかのように深い眠りについた。