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「前編」

 チェンジミーdeヘンシン「世界一の美人になったら……」(前編)


メイクアップ・ミーという看板のお店、きょうはヒマだって空気に支配されていた。女店員は人目がないのをいいことに、ふわぁっとでっかいあくびを立てる。


 しかしつぎの瞬間! 午前10時のだるい感はふっとんだ。なぜなら開いた自動ドアをくぐったのが、これまたずいぶん美人なお客さんだったからだ。旅行バッグと共に彼女はやってきた。


「い、いらっしゃいませ……」


 21歳の女店員は胸をドキドキさせて一礼。


「失礼するわ」


 カウンターを前にイスへ座るわかい女性。なぜこんなお店にくるのですか? と言いたくなってしまう店員を前に、自らの名前と年齢を語った。


「木下玲と言います」


「は、はい……」


「ここに来たのは、わたしを世界一の美人にして欲しいから」


「せ、世界一?」


 すごい事を言う人だと店員はドキドキが止まらない。近所で一番とか、地区で一番とか、都道府県で一番とか、あげくには日本で一番とか、そういうのを全部見下したスゴさ。本気ですか? と言いたくなるが、その前に別のことを口にした。


「し、失礼ですが……」


「なに?」


「木下さんは……わたしと同じくらい……21歳くらいですよね?」


「まさにドンピシャ! それが何が?」


「何って、いまでもふうつに美人だと思うわけでして……」


「あなたいま何て言った?」


「だからふつうに美人だと」


 すると玲が怒って立ち上がる。バン! とカウンターを叩いて立ち上がった。彼女に言わせると、ふつうって表現がとにかく気に入らないらしい。


「せっかく美人とか言われてもね、ふつうって3文字があると価値が下がるでしょう。なんかこう、よしよしってなだめられているみたいでムカつくのよ」


「そんな……」


 店員は玲の毅然たる態度にあせった。でも同時に……かっこういい人だなぁって少しポッとなった。同じ年齢だというのに、あこがれの女性を見るような目になってしまう。


「この木下玲はね、顔はS級、身長はA級、体重はA級、体系はA級という女なの。でもほら、どんなにがんばってもせいぜい、日本で一番の美人ってくらいでしょう? やっぱりワールドクラスになりたいのよ。ぶっちゃけ世を動かしてみたいのよ」


 すごい! なんてすごい人なの! と店員はますます目がトロっとなった。ここまで堂々と言い切るのは女のカガミと、胸がほわっと熱くなる。


「では木下さん……どのように変身なさるおつもりですか?」


「たしか新しいサービスで一生コースがあったわよね?」


「生涯あたらしい自分でいようコースですか? で、でもそれは高いですよ?」


「いくらだっけ?」


「800万円です」


「その話ノッた! 1000万円まで用意してきたから」


 女店員はぶっ飛んでしまった。なぜって鈴が旅行カバンを開けてみたら、そこには1000万円って札束が入っていたからだ。


 鈴いわく、中学卒業からせっせと働いてお金を貯めてきた。今回の変身にあたり、方々から借金もこさえた。そうすると1000万円を揃えるは楽勝だったとのこと。


「それに世界一の美人になれば、借金なんかすぐ消せると思って」


「わぁ……鈴さんて行動力があるんですね」


 ますますポッとなる女店員。あこがれのアイドルでも見るような目が止められない。そこで彼女はまず、パソコンの画面を鈴に見せながら、自身はマウスをクリックしながら説明した。


「美人っていうのは色々と特徴がありまして」


「どうせなら思いっきりいい所取りな変身をしたいわ」


「そうですね、S級美人の特徴をごった煮すると……こんな風になります」


「めっちゃステキじゃない。人類の宝物って感じ」


「それを取り込ませてもらった鈴さん画像に合わせてみると……」


「わぉ! これがわたし? まさに地球で一番じゃない?」


「いえいえ、太陽系で一番の美人ですよ」


「もう、うまいこと言うのね」


 2人の女は仕事というよりはたのしいプライベートタイムのように盛り上がった。そうして店員は確認のために、他の部分はどうされますか? と聞く。


「他? あぁ、乳の大きさとか?」


「ま、まぁ鈴さんは悪くないように見えるので必要ないですよね」


「いまさぁ、わたしBカップなのよね。どう思う?」


「言わせてもらってもいいですか?」


「同じ女として意見を聞きたい」


 そこで店員はCカップが理想ですと進めた。それにはちゃんとした理由があると力説を披露。それによればこういうこと。


 せっかくの美人になっても、乳があまり豊満だとそっちに目線が流れていく。つまり美人というモノのすばらしさを、女の命である乳が阻害してしまう。それは女にとっては不幸。


「大きすぎず小さすぎないCカップ、これで世界一の美人になれば……」


「あぁ、あなたの意見を聞いてよかった。その通りって思うから」


 2人はまるで恋人のように見つめ合うのだった。そうしていよいよ、すずの変身が始まる。あろうことか世界一の美人になろうっていうのだ。ドキドキハラハラ、変身への期待感、それらはもう半端ないスケール。


 そうして30分くらいが経過すると、新生した女がゆっくりと店内にもどってくる。自分を番を待っている他の客からは、びっくりしたような声やためいきが漏れる。


「そ、そんなにステキなのは反則ですよ、もう!」


 真っ赤な顔の店員は、まるで恋しちゃった女の子みたいになって、でっかいスタンドミラーを鈴の前に立てた。そうして鈴本人は、あたらしい世界の始まりにうっとり目を隠せない。


「あぁ、これこそわたしって感じだ」


 いつまでもカガミを見つめていたくなる。カガミに映る自分へ向かって、やさしいキスの一つでもしてやりたくなる。


「それで、お金数えるのはどのくらいかかる?」


 一刻も早く外を出歩きたい鈴、あとになってから戻ってくるとか言いかけた。


「それは大丈夫、すぐ終わります」


 テレまくりの店員は説明する。800万もの大金を人間が数えるのは時代遅れですよと。計算マシーンとかいうのモノの前に鈴をつれていき見せてやった。どでかい口の中に一気にお金を放り込んでやった。


ーシャカシャカ・チーンー


 わずか10秒で終了。これぞハイテクというマシーンに鈴は大満足。領収書をもらったら、ありがとうと言って店を出ようとする。


「あ、あの……鈴さん」


 そこにはフルーツのようにとろけた目の女店員の姿。


「どうしたの?」


 鈴がやわらかく微笑んでやると、女店員はガクガクブルブルふるえた。


「す、すごくステキです……ほんとうに……」


 まるでかわいい妹みたいと思った鈴が近寄ると、女店員は恥じらいがつよすぎて動けない。そんな彼女の頬にそっと手を当てる鈴。世界一の美人としてつぶやいた。


「ありがとうね、あなたに会えてよかった」


「あ、あの……」


「お仕事がんばって!」


 鈴がそういってほっぺにチュッとやってやれば、女店員はへなへなになって座り込んでしまった。よっぽどハートを触られてしまったのだろうか、ほんの少しだけどお漏らしまでしてしまった。白いパンツがジワーっとぬれたけど、彼女はずっと鈴を見つめ続ける。


「じゃぁね」


 鈴がそう言って店を出ていく。さぁ世界はどう変わるか! と思っているが、それはすでに店内に生じていた。女店員が漏らしただけではなく、他の女性客は失神までしていたのだから。



ー世界一の美人になった鈴、さぁ、世の中は彼女をどう見るのか! 後編に続くー

https://ncode.syosetu.com/n1634ey/

彼氏のバカ! せっかくスリムになったのに!


チェンジミーdeヘンシン「美人になる」編

https://ncode.syosetu.com/n6544de/


チェンジミーdeヘンシン「ブスになる」編

https://ncode.syosetu.com/n5914dc/


巨乳です。おっぱい星人です。あれこれお話BOX

https://ncode.syosetu.com/n3857ey/


お時間があったら、こちらもよろしくお願いしますミ★(*^-゜)v Thanks!!★彡

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