表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法犯罪対策班業務日誌  作者: 小山タケヒコ
6/6

追走:6

 〇帝国歴2108年9月の第3火曜

  午後1時56分

  帝都第3環状高速道路

  第28料金所を目前にした道路上

  金属のカタマリの上にて


 魔法炉が停止したのを確認してからは早かった。

 補助炉でも積んでいたら怖かったので、魔装騎の腕と足を丁寧に砕いて、胴体だけになった機体から強奪犯を引っ張り出し、抵抗させるのも面倒だったので適当にぼこぼこにして脇に転がした。やはり30秒かからなかった。

 へばりかけていたリョウちゃんに無理やり魔法で拘束もさせたから、気が付いても逃げられないだろう。さっきの魔法の連続行使の影響もあって、リョウちゃんはそのまま気を失った。マスク越しだから分からないが、なんとなくやり切った男の顔をしているような気がした。


「…………ふぅ」


 ちょうどよい具合に腰掛けられそうな部分が残っていたので一息つく。

 遠くからサイレンの音が聞こえる。治安騎士団のパトカーだろうか?


「サチコ、良いニュースと悪いニュースがある」

「隊長?」


 ずっと沈黙していた通信機から隊長の素敵ボイスが聞こえてきた。


「なんですか?」

「良いほうのニュースから伝えてやる。もう聞こえてるだろうが、治安騎士団の魔装騎部隊がそっちに向かってる。……遅かったかもしれんがな」

「そうですね」


 ええ。もう片付きましたからね。

 もはや私は相槌を打つくらいしかできない。文句を言う気力もないのだ。

 さっきまで脅威だった物体は、今は私のお尻の下にある。さすがのミスリルだけあって、金属のくせに熱くもなく冷たくもない絶妙な温度で私のお尻を支えてくれていた。


「悪いほうのニュースだが」

「聞きたくありません」


 やらかした自覚はあるのだ。

 命の危機だったから仕方ないとか、帝国軍もっとしっかりしてよとか。言いたいことはもちろんたくさんある。


「そうもいかん。現場の判断に任せた俺にも責任はもちろんあるから、一緒に謝ってやる」

「私、がんばりました」

「ああ。それは俺がよく知ってる。……でも、そこまでぶっ壊す必要はなかったろ?」


 やっぱりだ。

 私だって覚えていなかったわけじゃないのだ。必死だったからちょっと加減を間違えてしまっただけなのだ。

 殺さない壊さない怪我をしない。

 ふたつ守ったのだ。

 ほめてくれたっていいと思う。


「始末書提出して、上司連中に謝り倒したら、メシくらい奢ってやる」

「高いとこがいいです」

「もちろんだ。おまえはよくやったよ」


 たぶん、散々な休日だった。

 本当ならツーリングに出かけてもよかったし、秋物のセールに行ったってよかった。出かけなくとも自分の部屋でゆっくりくつろぐことだってできた。

 それは全部できなかったのだけれど。

 でもまあ、理解ある上司にちょっとだけほめてもらえて、おいしいごはんで締めくくれるならいいかな。


 私は立ち上がって、空を見上げた。まだまだ太陽は高い位置にある。

 気持ちを切り替えて、仕事に取り掛かるのだ。


「休日手当って出るのかな……」


 心配事は尽きないけれどね。

 さぁ、リョウちゃんとバイクを回収して帰ろう。

 まだまだ今日は終わらないようだ。


 了

とくに続きません。あなたの暇つぶしの一助になれましたか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ