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「私もマデレーンも、今回のことは反省しているのだ」


 お父様は、スコーンを置くと、静かに話し始めた。


「ルクレツィアは、私たちの、小さな可愛いお姫様だ。そして、ルクレツィアのどんなわがままも、贅沢も、我がザリア領であれば、大抵は苦もなく実現できる。小さな子どもの、可愛いいたずらのように、楽しんでさえいたのだ」


 お父様とお母様は、懐かしむようにうなずきあう。

 小さな可愛いお姫様って…綺麗なお父様に真顔で言われると気恥ずかしい。少し顔が赤くなる。


「ルクレツィアのそんな態度をよく思わない噂も、確かに耳に入っていた。だか、そもそも私もマデレーンも、いかに誠実な態度を取ろうとも、この迫力ある見た目のせいで、悪い意味に解釈されることもしばしばでな」


お父様は、苦笑しながら、紅茶を飲む。


「そうね。わたくしも、夜会でワインをドレスの裾にかけられたことがあったのだけれど、どんなに優しく声をかけても青ざめるばかりで、最後には震えながら跪いて許しを請われて、困っちゃったことがあったわねえ」


 ……相手の気持ち、わかります。

 迫力ある美人の笑顔って怖いよね……


「我がザリア家のものに黒い噂はつきものだ、と気にしてもいなかったのだ。だが、こうして婚約の障害になるとはな」


「もっと早く対応すべきだったわ。ごめんなさいね」


 お父様とお母様が頭を下げる。


「そんな、謝らないでください。なんでも許される環境に甘えていた私が悪いんです……」


 覚えはないが、この2人に頭を下げさせている現実は重い。申し訳なさすぎて、体が縮こまる。


「マナーのための家庭教師は既に手配した。期間も限られていることだし、住み込みで、できうる限り常に側にいて指導してもらう。煩わしかろうが、敬意を持って教えを請うように」


 お父様、仕事が早い。


「わかりました。努力します」


「今回、ロラン殿下には、かなり厳しいことを言われたみたいだけど、元々は、そこまで高慢な方ではないと、わたくしは思うの。生真面目で他人にも厳しい方だから、その悪い面がでたのね、きっと」


 ……追い込むとか、引きずり下ろすとか言っていたのに、お母様の発言は、ずいぶん穏やかになっている。


「そもそも、ルーちゃんと同い年なんですもの。長い目で見てあげなければ」


 あ、そうですよね……人のこと言えませんよね、すみません。


「噂への対処だけれど、大変不本意なのだけれども、お父様もわたくしも、直接手を出せば出すだけ相手が怖がるから、親しい方たちを通じて、少しずつルーちゃんの良さを売り込もうと思うの」


「ルーちゃんの良さを知ってもらうためにも、とりあえず1ヶ月ほどしてマナーに自信が出てきたら、出来るだけ一緒にお茶会、夜会に参加するようにしましょう?ふふ、忙しくなるわよ」


 お母様は、笑顔で気合い充分だ。


「はい! よろしくお願いします」


 やれることは全てやろう。そのために、お母様もお父様もこんなに考えてくれている。


「ロラン殿下に認めていただくには時間がかかると思うのだけれど……でも、そうね、ルーちゃんはとりあえず、ロラン殿下に、一旦、告白してきなさいな」


 なるほど、告白ね。


 ……

 …………


「えっ?」


 ……いや、ここは異世界。告白の意味が違うかもしれない。


「あの、告白ってなんですか?」


「好きな人に想いを伝えることね。」


 ……違ってなかった。

 あれだけ強く拒まれたロラン殿下に、私は告白するらしい。

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