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「今回は、本当に災難だったね」


 レオノールが、気遣わしげに声をかけてくる。


 ここは、ザリア家のダイニングルーム。私の救出に尽力してくれた、レオノール、ルイ先生、オスカー隊長を招いて、お礼に食事を振る舞っているところだ。もちろん、エドワードにクラウスもいる。


 難しいとは思ったが、ロラン王子と、王都第1騎馬隊長にも一応、声をかけてみた。案の定、丁重に辞退されたので、ここにはいない。


 オスカー隊長は、普段と勝手が違うのか、やや居心地が悪そうだ。クラウスは、普段より豪華な食事に、ほくほく顔で、料理を楽しんでいる。


「一時はどうなることかと思いましたが、皆さんのお力で、無事に帰ってくることができました。本当にありがとうございます」


 私は、皆に改めて礼を言うと、クラウスが自嘲気味に呟いた。


「結局、ほとんど役に立たなかったですけどね」


「そんなことないわよ。クラウスが第1騎馬隊を連れてきてくれたから、事後の処理も早かったし、レオ様とエドが、ウィンザー公爵を連れてきてくれたから、その場でお父様と相談できて、助かったわ」


 あの後の対応の早さは、私もびっくりした。ルイ先生が封印の魔法を施した後、ウィンザー公爵とお父様の指示に従って、倒れていた全ての人々が、第1騎馬隊の兵士たちに、次々と運ばれていったのだ。


 その後どうなったかわからない人もいるが、尋ねたときのウィンザー公爵とお父様の恐ろしい笑顔に、追求することができなくなってしまった。


「結局、陛下は何もしなかったことにして、寝室に運んだんだよね。起きた後も、特に動きは無かったし、一安心だね」


「グリューのおかげで、アメリアに関する記憶を無くしてますしね」


 レオノールが話すと、ルイ先生が、しれっと答えた。


「アメリアは、ウィンザー公爵領の修道院で、修道女として生活させながら、監視を続けることにしたんですわよね」


 あの時、アメリアは、確かに自分のことを主人公だと言っていた。もしかして、彼女は、私と同じ転生者なのかもしれない。


「なにもなければ、適当な貴族の養女になって、来年から王立魔法学園に通ってただろうにね。公爵領の中でも、かなりへき地の、訪れる人もいない修道院なんだ。自給自足が基本だし、生活は、かなり厳しいものになるだろうね」


 レオノールは、淡々と、アメリアの現状を伝える。


「そうですか……少し、気の毒な感じもしますわね」


 もし、私がこの1年、行動をしていなければ、攻略対象たちに囲まれた学園生活を送っていたのは、アメリアのほうだったろう。せっかく主人公に転生したのに、誰も振り向いてくれなかったら、私でも、同じことをしてしまったかもしれない。


「ルーは、優しいね。……でも、これでも処罰としては、緩いくらいだよ。身分の無い女性が、陛下を操って伯爵令嬢を陥れるなんて、あってはならない事態だ。本来であれば、もっと厳しい処罰を受けて、当然だからね」


 レオノールは、いつもとは違う、厳しい表情で断じる。この世界での身分の差というものは、思ったより大きいものなのかもしれない。


 アメリアのこれからを想像して、少し暗い気持ちになっていると、ふと、エドワードが、食事を全く食べていないことに気がついた。


「エド、全然食べてないじゃない。……大丈夫?」


 エドワードに声をかけると、しょんぼりとした答えが返ってきた。


「ルーが、連れて行かれるときも、その後も、僕は、全然役に立たなかったんだ。……この場にいる資格なんて無いよ……」


「そんなことないわよ。レオ様を説得して、助けに来てくれたじゃない。エドも、ありがとうね」


「説得は、ほとんどルイ先生がしてくれたんだ……」


 慰めてみるが、なかなか元気になってくれない。困っていると、ルイ先生がフォローしてくれた。


「エドワード様は、これからですよ。魔法学園がお休みの日には、こちらに来ますから、出来ることを少しずつ増やしましょう。まずは、身体を大きくしなくては。さあ、きちんと食べてください」


 ルイ先生が声をかけると、エドワードは、ようやく食べ始めた。


 ***


 食事が終わり、皆で、お茶とお菓子を楽しんでいると、使用人が駆け込んで来た。


「あ、あのっ……お客様が、……」


 普段は、けして慌てないのに、焦って言葉が出ないようだ。また、なにかトラブルだろうか。


 席を外し、応接室に向かうと、フードを目深に被った人物が待っていた。高貴な服に身を包んでいるようだが、誰だろう。不思議に思っていると、その人物は、おもむろにフードを外した。

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