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「私は、幸運にも、2つ属性を持つことが出来たので、闇属性のことは、ずっと隠してきたのですよ」
ルイ先生は、私だけに聞こえるように、話し出す。
「ですが、マデレーン夫人は、どうやって調べたのか、ある日突然やってきて、その話をしてきましてね。今後も黙っていることを条件に、ルクレツィアさまの家庭教師をするように頼まれたのです。本来であれば、今年から王立魔法学園で教鞭をとるはずだったのですがね」
「す、すみません」
そうだったのか。お母様の行動力に、ここでも驚かされる。しかし、ルイ先生の人生設計まで壊しているとは思わなかった。申し訳なくて、身を縮こませる。
「……一生懸命なルクレツィアさまの家庭教師は、思っていたよりも楽しかったですよ。王立魔法学園の教師の件も、マデレーン夫人が、来年から入れるように、学園長と調整してくれましたしね」
そう言って、ルイ先生は、にっこりと笑ってくれた。来年はルイ先生に教わることができないのか……少し寂しいが、ルイ先生のために喜ぼう。
「そうなのですね。1年間、本当にありがとうございました。……寂しくなりますけど、学園でも頑張ってくださいね」
笑顔でそう言うと、ルイ先生は、おや、という顔で教えてくれた。
「ルクレツィアさまも、来年入学すると、お聞きしていますよ? これからも、よろしくお願いしますね」
「え? でも、私、魔法使えませんけど」
魔法が使えないのに、魔法学園に入学していいのだろうか。
「そこは、貴族枠ということでしょうね。大丈夫。魔法以外の座学も充実していますし、少なくとも、筆記試験で遅れを取らないよう、この1年、教えてきましたから」
なるほど、ザリア家の力で入学するのね。悪役令嬢らしいが、家柄以外に褒めるところが無いと言われないよう、勉強だけでも頑張ろう。
「それはそれとして、……陛下とアメリア嬢の件ですが、確かに、闇属性の、封印の魔法でなら、一応、対処可能です」
ルイ先生は、本来の問題に話を戻すと、封印の魔法について、 教えてくれた。
「魅了の魔法を解除するのは、本人にしか出来ないのですが、封印の魔法は、特定の記憶を封印することが出来ます」
「ですから、アメリア嬢には、自分が魅了の魔法を使えるという記憶全てを、陛下には、アメリアに関係する記憶全てを消すことで、一応、問題を解決できます。能力を消すわけではないので、今後も気をつける必要はありますけどね」
なるほど。ずいぶん便利な魔法なようだ。
「ルイ先生は、その気になれば、人を思いのままに動かすことも出来そうですわね」
率直な感想を伝えると、少し厳しい顔に戻ってルイ先生が言った。
「……だから、闇魔法の使い手は、迫害されてきたのですよ。私から言わせれば、出来ることは、光魔法と大差ないのですけどね」
ルイ先生は、寂しそうだ。
「ルイ先生……そうだ! 私、魔法学園に入学したら、光と闇の魔法を研究しますわ! 大丈夫。迫害なんて、大抵は、知識不足から来る恐怖心なんですから」
「私には、魔法適性は無いですけど、ルイ先生が、ずっと闇属性を隠して暮らさなくて済むように、勉強、頑張りますから」
こんな寂しそうな顔をさせてはいけない。そう思って、出来るかもわからないのに、そう宣言する。ルイ先生は、少し驚いて、それから笑った。
「……期待してますよ。学園に入る前に、ルクレツィアさまと出会えてよかった。……ありがとうございます」
いつも厳しいルイ先生の、優しい笑顔にドキッとした。ルイ先生は、あっという間に、クールな表情に戻ると、行動を開始した。
「さて、まずは、人払いを。陛下とアメリア嬢に封印の魔法をかけましょう。グリューには残ってもらって、グリューが対処したことにしても、いいですか?」
ルイ先生にそう聞かれ、頷いた。




