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割れんばかりの咆哮が轟くと、ステンドグラスにヒビが入り、シャンデリアが1つ落ちた。大広間にいた人々は、あまりの衝撃に気絶したのか、次々と倒れていく。
追い詰められていた私とロラン王子は、なにが起きたのか分からず、半ば呆然としながら、顔を見合わせる。
(む? 気合を入れすぎたか? 久しぶりに本気の戦いができると思ったのに、誰も起きていないではないか)
そこに、残念そうなグリューの声がした。
「グリュー! 助けに来てくれたのね! お父様とお母様は?」
安心感から、グリューの近くまで駆け寄って、大きなグリフォンの身体を抱きしめる。
「ルーちゃん! 心配したわ!」
グリューの背中から、お母様が叫ぶ。お父様も、いるようだ。
「お母様! お父様も……よかった」
グリューから離れ、今度は降りてきたお母様に抱きつくと、肩の荷が下りた安心感からか、涙が止まらなくなった。これで大丈夫だ。根拠もなくそう思った。
……
…………
「……もう大丈夫。来てくれて、ありがとう。……そうだ! アメリアと陛下が!」
ひとしきり泣くと、ずいぶんと落ち着いてきて、状況を思い出した。慌てて振り向くが、全員倒れたままだった。
「お嬢様!」
「ルー!」
そこに、クラウス、エドワード、レオノール、ルイ先生がなだれ込んできた。
「あら、あなた達、どうしてここにいるの?」
不思議に思って聞いてみると、クラウスは、がっくりと肩を落として、呟いた。
「どうして、じゃないですよ。お嬢様を助けるために、第1騎馬隊の説得までして、やっとここまで来たっていうのに……」
「ルー! よかった。無事だったんだね!」
横にいたエドワードは、落ち込むクラウスを通り越して、抱きついてきた。後ろのドアから、騎馬隊らしき兵士たちが、わらわらと入ってきている。
「エド。……助けに来てくれたの? それもずいぶんと大掛かりに。……後々、問題にならないかしら?」
嬉しいけど、大丈夫なのだろうか。
「大丈夫じゃないかな? 陛下も、今回はずいぶんと無理を通したみたいだね。私も、こんなことになっていたなんて、全然知らなくて。ルーには、つらい思いをさせたね」
レオノールは、そう言うと、私の頭にぽんと手を乗せて慰めてくれた。
「……こんな、のんびりしてる場合じゃないですよ! 陛下とアメリアをなんとかしないと!」
復活したクラウスが、自分を棚に上げて焦りだす。
「アメリアは、魅了の魔法っていうのを使ってるらしいですよ。解除は本人にしかできないとか。グリュー、どうにかならないか?」
(光魔法を抑えられるのは、闇魔法だけだ。闇属性のルイに聞けばよかろう)
クラウスが、グリューに聞くと、意外な答えが返ってきた。
「え? ルイ先生って、闇属性なの?」
全然、知らなかった。思わずそう言って、ルイ先生を振り返ると、冷たい笑顔で静かに怒っている先生に、部屋の端に連れて行かれた。これは、本気のときのやつだ。ルイ先生の鬼の特訓時代を思い出し、冷や汗が出る。
「ルクレツィアさま、闇属性のものは、迫害対象なのですよ。気軽に口に出していいものではありません。……一体、誰に聞いたのですか?」
ルイ先生は、私だけに聞こえるように、小さな声で聞いてきた。闇属性が迫害されるとは、知らなかった。
「ごめんなさい。……あの、グリューが、ルイ先生が闇属性だって。ルイ先生なら、光魔法を抑えられるのですか?」
そう聞くと、ルイ先生は深いため息を吐いた。
「まったく……ザリアのものは、厄介ですね」




