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「ルーちゃん、エド、私たちがいない間のザリア領を、よろしくね」


 お母様は、心配そうに、私とエドワードを抱きしめる。


「お母様、大丈夫ですわ。クラウスも、ルイ先生もいますし、お父様とお母様がいない間、しっかりザリア領を守りますから」


 エドワードに目配せしながら、お母様を抱きしめ返す。クラウスは、いつもどおり、後ろに控えている。


「そうだよ。僕もルーも、最近は、ロラン殿下のところで、執務の手伝いもしてるし、お父様とお母様がいない2週間くらい、僕たちで、なんとか回せると思う」


 まだまだ遊びたい盛りのはずのエドワードは、健気に答える。


「領地経営のための代理は、本当にいらないのか? 無理を言ってきたのは、陛下なのだ。いまからでも、代わりの人材を、派遣してもらおうか……」


 お父様も、不安げに確認してくる。


「緊急性の高いものは、全て処理したんですよね?」


「もちろんだ。だが、新しい問題が起きるかもしれないし……」


「大丈夫ですわ。知らない人間に、領地経営の資料を開示するリスクに比べたら、私たちがやったほうがいいという話になったでしょう?」


 不安げなまま、言いつのるお父様に、安心させるように、言葉を重ねる。


「そうか。……そうだったな。……いない間、よろしく頼むぞ」


 お父様は、やっと納得したのか、私とエドワードを抱きしめて、そう言った。


「お父様とお母様こそ、道中、お気をつけください。隣国との関係も、今は良好ですけど、なにがあるかわからないですから。……無事に帰ってきてくださいね」


 むしろ、2人のほうが心配だ。この世界で、国を超えるのは、そんなに気軽なものじゃない。


「そうね。気をつけるわ。……クラウス、それから、グリューも。いない間の2人のこと、よろしくね」


 お母様はそう言って、クラウスとグリューに目線を送ると、お父様と馬車に乗り込んだ。


 大丈夫と言ってはみたが、ずっと支えてくれていた2人がいなくなるのは、少し心細い。馬車が段々と小さくなって、完全に見えなくなるまで、見送った。


「さて、……」


 馬車が見えなくなって、しばらくしてから、ようやく動き出す。


「お父様とお母様がいない間は、ザリア領を離れることはできないわね。……と言っても、今日の執務は、お父様がしてくれたし、エドは、剣術の訓練をしてもいいわよ。……そうだ。私も見学させてもらおうかしら」


 ルイ先生は、この2週間、ザリア家に泊まってもらうことにしたから、もうすぐ来るはずだ。なんだかんだと忙しく、2人の練習を見たことが無かったが、この機会に見てみるのも、楽しそうだ。


「ええっ?! まだまだ下手で、かっこ悪いから、来なくていいよ」


 エドワードは、あからさまに動揺して、拒絶してくる。


「努力してるエドを見て、かっこ悪いなんて、思わないわ。いいから、いいから。ルイ先生が来るまで、準備してましょう」


 嫌がるエドワードの背中を、ぐいぐいと押し、エドワードの部屋まで送っていく。


「ルーには、強くなってから見せたかったのに……」


 エドワードが、呟くが、気にしない。


「お嬢様がこうと決めたら、諦めるしかないですよー」


 後ろから、クラウスが、役に立たないアドバイスを送ってくる。


「失礼ね。制御の効かない猛獣みたいに、扱わないで」


 思わず反論するが、クラウス、エドワード、そしてグリューまでもが、え? そこ反論するの? という顔で同時に振り向き、熱くなった私は、全員を追いかけて、屋敷中を走り回った。


 結局、途中で現れたルイ先生に見つかり、淑女としての振る舞いについて、散々怒られることになった。

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