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「これとこれ、それから、あちらの服と、あの服に合ったネックレスがあったはずだから、セットで荷物に詰めてちょうだい。贈呈品は、なにがいいかしら……下手なものは、持っていけないわよね……」
初雪がちらつき始めた冬の始め、ザリア家では、お母様を筆頭に、慌ただしく、旅立ちの準備が進められていた。お母様は、歩き回りながら、侍女たちにテキパキと指示を出す。
「それにしても、不満だわ。……ルーちゃんの印象を良くする作戦も、中途半端なまま、最近では、アメリアをいじめているという噂まで、出るようになってきたというのに」
「この大事な時期に、よりによって、隣国への親善訪問を、ザリア家が任されるなんて」
お母様は、私を心配してか、この話を受けてから、ずっと怒っている。
「お母様、仕方ないですわ。陛下直々のお達しですもの。それに、確かに隣国の武力と経済力は、最近では、ますます脅威となっていますから」
「円満な関係性をアピールするためにも、ウィルキア王国の重鎮が行ったほうがよいという、陛下のお言葉も、納得できます」
お母様を慰めるために、そう言ったが、予想に反して、お母様は、準備を忘れて、しばらくぽかんとした後、呟いた。
「……驚いたわ。お父様と話しているみたい。……気がつかないうちに、ずいぶんと事情に詳しくなったようね? そういえば、ルイ先生に勉強を教わり始めて、もうずいぶんと経つのだったわね。ルイ先生、さすがだわ……ルーちゃん、あなたも頑張ったわね」
お母様は、1人納得すると、私の頭を、優しく撫でてくれた。
「そういえば、ルイ先生って、何者なんですか? マナーにもお詳しいし、知識も豊富、馬だって乗れるし、エドの剣術の相手もできて」
「それにこの間、魔法も使えるって……伯爵家とはいえ、我がザリア家の家庭教師でいるのは、あまりに、もったいないと思うのですが」
ふと、気になっていたことを聞いてみた。ルイ先生の完璧超人ぶりは、すでに日常だが、馬で早駆けしていった精悍な姿を見て、さすがにこれはおかしいのでは? と、疑問符が付いた。
それに、この間、何気なく魔法が使えるか聞いたら、もちろん使えますよ、と答えが返ってきたのだ。もちろんて、どういうことだ。どれだけ凄い人なんだ。
「あら、聞いてないの?」
お母様は、少し驚いたように尋ねてきた。
「? なにをですか?」
「うふふ、本人が話してないなら、わたくしからは言えないわ」
質問の意味がわからなくて、聞き返すが、言葉を濁された。こうなると気になるが、お母様には勝てる気がしない。そのうち、ルイ先生に尋ねよう。




