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「うちの執事は、大げさなんだよね」
レオノールは、大きなベッドの中で、やれやれ、という風に、髪をかきあげながら呟いた。
ここは、ウインザー公爵家の中にある、レオノールの私室だ。こんな事態にならなければ、訪れる機会も無さそうだが、初めて訪れたウインザー公爵家は、品のいい上質な装飾品が、華美になりすぎず、上品に配置されていて、美しい城のような家だった。
レオノールは、天蓋付きの大きなベッドに、シルクのガウンをまとい、大きなクッションで身を起こしている。いつもより弱々しく血の気の引いた様は、かえっていつもよりレオノールを魅惑的に見せている気さえする。
「レオ様が、刺されたという一報を聞いたときは、背筋が凍りましたわ。でも、冗談が言える程度には元気そうで、ホッとしました。……大丈夫、なんですよね?」
空元気の可能性を考えて、一応、念を押す。
「刺されたのは、本当なんだけどね。傷もそんなに深くないし、お医者様も、命に別状はないって、言ってくれてるよ」
レオノールは、にこやかに答えてくれる。
「……なにがあったのか、お聞きしてもよろしいですか?」
私がそう聞くと、レオノールは、困ったような顔になり、首を傾げた。
「うーん……話しにくいんだけどね。でも、そうだね」
「簡単に言うと、私を慕ってくれていた女性たちに、この先、気持ちに応えることは出来ないから、自分の本当の相手を探したほうがいいって話したら、そのうちの1人から刺されたって話なんだよね」
レオノールは、なんでもないことのように、微笑みながら話してくれた。
「レオ様……大丈夫ですか? ……とても辛そうに見えます」
なんでもない風に見えるけど、でも、泣きそうにも見えるのは、気のせいだろうか。いつもより笑顔も弱々しい気がする。不安になって、思わず、手を取った。
「……ルー。……もう、ずいぶんと一緒にいるから、無理してもバレちゃうのかな。……まいったな」
レオノールは、取られていないほうの手で、器用に髪をかきあげると、ため息を吐いて、俯きながらそう言った。
「……慕ってくれていた女性たちのこと、嫌いになったわけじゃないんだ。妹のように大事にも思ってる。……でも、私も、もう18歳で、周りにいる女性にも、同い年の人が何人かいてね」
「女性は、特に、結婚を考えたら、相手を探せるギリギリの年齢だからね。彼女たちのためにも、はっきりさせたほうがいいと思ったんだ」
レオノールは、また、ため息を吐く。
「でも、彼女たちは、……特に、刺してきた女性は、正妻になるのは無理でも、私の側室の1人でもいいって、今更、他の人なんて探せないって、泣いてしまってね。……断ったら、こうなったのさ」
レオノールは、肩をすくめると、自嘲するように笑った。




