表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/66

18

「あ、……す、すみません。……私、ロランさまに婚約者がいるなんて、知らなくて……」


 アメリアは、泣きそうになりながら、慌てて、ぴょこんと頭を下げて、謝る。


 正確には、候補だけど。……そう思ったが、あえて、訂正はしない。


 ……しかし、困った。悪役令嬢として、1番踏んではいけない地雷を、踏んでしまった気分だ。このまま、没落ルートまっしぐらなのだろうか。


 ……今、無性に、ビジネス書が読みたくなってきた。パワハラを怖れる上司のためのやつ。以前は、上に立ったことがなかったから、欲しいとも思わなかったが、その手の本には、きっと、現状を打破できる、素敵な指南が、書いてあるのだろう。…ここが、現代の日本なら、今すぐ書店に走るのに。


 ひとしきり、自分の致命的なミスについて、現実逃避した後、諦めて、自力でなんとかすることにした。


「アメリアさん……責めているわけではないの。ただ、……私、……」


 ……結局のところ、直球勝負しか思いつかない私に、できることは、これしかない。恥ずかしさで俯きたくなる顔を上げ、アメリアの目を見て、話す。


「私、……ロラン殿下のこと、お慕いしているの。……それだけ、知っておいてくれれば、いいわ」


 今、何を言っても、いじめているように、見えるだけだろう。


「ルクレツィアさま……」


 結局、泣きそうになりながら呟くアメリアを、その場に残し、教会の奥へと向かった。


「……なかなか、潔かったですね」


 しばらくして、クラウスが、意外にも、褒めてくれた。


「そう? いじめてるみたいに、なっちゃったと思ったけど。……あれ、主人公に、1番やっちゃいけない奴だから」


 ただ、ずっと逃げていたので、気持ち的には、すっきりした。


「……没落の可能性があることを、お父様、お母様にも、伝えた方がいいわね。……それとも、没落後も、生活ができるように、なにか手に職でも、持ちましょうか……」


 今の私に、できる仕事があるだろうか。魔法の適性によっては、冒険者になるのもいいかもしれない。……あ、ちょっと、楽しくなってきた。


「ね、冒険者って、どうかしら?」


「ありえません! 念のため、ザリア伯爵、マデレーンさまには、お伝えします。ですが、お嬢様も、もっと、真面目に考えてください」


 クラウスに、ウキウキしながら聞いたら、速攻で却下され、さらに怒られた。


(我が側にいて、没落などあり得ん。金の恵みは、ザリア家に与えたものだ。ザリア家が離れれば、金鉱は、たちまち枯れるだろう)


 グリューから、力強い言葉が出る。ありがとう、という意味を込めて、少ししゃがんで、頭を撫でた。


「お金に困らないのは、助かるわね。……領地を追い出されたら、世界を旅でもしましょうか」


(……我は構わんぞ。暇さえ潰せるならな)


 グリューは、どこでもついてきてくれそうだ。


「グリューは、構わないって」


「いやいや、オレが構いますよ。……もうちょっと、伝統あるザリア家を守るんだって、気概を持ちましょうよ」


 クラウスに伝えると、クラウスは、不満げにそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ