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「ちょっと、思いついたのだけど」
ここはザリア家のダイニングルーム。今日の朝食は、薔薇のジャムや、フルーツを散りばめたクレープだ。これは食事ではなくデザートではないか、と内心思うが、ルイ先生に教わった通りに、上品に食べ続ける。
ルイ先生は、舞踏会の後、四六時中付いてまわることをやめ、今は、座学とダンス、乗馬を教えるときだけ訪れ、たまに一緒にディナーをしてマナーをチェックする、という感じに落ち着いた。
両親もルイ先生もいないと、かなり気楽だ。後ろに控えるクラウスを振り向き、思いついた内容を話し出す。
「アメリアに、戦いを挑まずにして勝つ方法を考えたのだけど……」
「……すでに、負けている感じが、ぷんぷんしますが、まあ、聞いてあげますよ。どうぞ」
クラウスの、残念な子を見るような目は気にせず、話を進める。
「アメリアの優位性って、結局は、光魔法の使い手だっていうのが、大きいのよね?」
まずは、現状の確認だ。
「まあ、それは、そうですね。お嬢様が、いくら有力で財力もある伯爵家の娘でも、光魔法の使い手と対等かというと、やや疑問符が付きますしね」
「もちろん、ザリア伯爵ご本人であれば、伯爵のほうが立場が上になると思います。ただ、お嬢様はひとり娘とは言え、ザリア領の跡取りという訳でもないですから、単独で比べると、やや分が悪いですね」
クラウスは、厳しく現状を分析してくる。
「分かっているわよ。……でも、そこで、もし私が光魔法の使い手だったとしたら、……どう?」
なんていいアイディアだ! 自分の思いつきに、思わず、鼻息が荒くなりかけるが、お嬢様らしく、すまして答えを待つ。
(才能のかけらも感じ取れないが……)
クラウスではなく、窓際で気持ちよさそうに寝そべっていたグリューが、面倒くさそうに、顔を上げると言った。
「努力すれば、なんとかなるかもしれないじゃない! ね、クラウス?」
無茶振りされたクラウスは、げんなりした様子で答える。
「そうですね……まあ、どんなことであれ、落ち込まれるよりは、やる気になってもらえるほうが、私も助かりますし。……ちょっと適性を調べに行ってみますか?」
「あら、調べることができるの?」
さすが、異世界。簡単に調べられるらしい。
「王都の1番大きい教会に行けば、調べられますよ。普通、貴族は魔法を使う必要性が無いので、調べたりしないですけどね」
クラウスは気楽に提案する。
「ちょっと待って。……王都の1番大きい教会って、アメリアが施しをしているのじゃなかった?」
「そうですよ。あ、……直接対決ですね?」
クラウスは、少し意地悪そうに笑って、確認してくる。
「……アメリアのいない、午後に行きましょうか?」
まだ、身体の調子も出ていないし、……それに、なにか、やることがあった気がしてきた。
「……もう怯えたりしないんじゃなかったですか?」
わざわざ会うこともないだろうと思ったが、クラウスは、納得しないらしい。
「……わかったわよ」
諦めて、そう呟いた。




