表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/66

4

「お父様、失礼します」


「……入れ」


 執務室に入ると、エドモンド=ザリア伯爵が気遣わしげにこちらを見ていた。

 ルクレツィアと同じ長い銀髪を後ろで束ね、焦げ茶の眼が知性的。怒っているのか、元々なのか少し怖い感じだけど、ルクレツィアによく似た美人さんです。


 さて、ゲーム知識しかない私が、この世界で生き残るために、この人の協力は絶対外せません。

 令嬢としての立ち振る舞いも出来ない、家族として一緒に過ごした記憶も無い。

 頼りになるのは、ルクレツィアのどんなわがままも聞いてくれる、ルクレツィアが大好きな父親という、ゲームの設定だけ。……よし、頑張ろう!


「体調は、もうよいのか?」


「おかげさまで。……ご配慮ありがとうございました」


「クラウスから、ロラン殿下に言われたことは全て聞いている。随分、高慢な態度だったらしいな」


「……っ!申し訳ありません」


「ロラン殿下が、だ」


「……え?」


「そもそも、王が進めている話について、王に直接断るならまだしも、相手を呼び出し、辞退するよう圧力をかけるなど、あまりに配慮に欠けた行動であろう?」


「……確かに。……いや、でもですね、私もマナーがなっていなかったですし、好きなものは何でも買ってもらえることに甘えて、贅沢をし過ぎていたのは確かかと。」


「お父様には、婚約に向けて尽力して頂いたのに、私のせいでこんな事態になって申し訳ありませんでした。」


 なんだか泣けてきた。いや、前向きになるって決めたんだから! と、溜まった涙をグッと我慢して、ザリア伯爵を見つめる。


「ふむ。…ルクレツィアにしては、随分殊勝だな。だが、元気になったようでよかった。」


 ザリア伯爵が柔らかく笑った。


「ところで、マナーの家庭教師は、10歳のときにもう完璧だからと辞めさせたのでは無かったか?」


 ……ルクレツィアさん、なにしてるの?!


「……もう一度学びとうございます」


「……いいだろう。手配しておく。ルクレツィアも14だ。マナーだけではなく、この際、 領地経営に必要な知識も身につけるといい」


「領地経営ですか?」


「そうだ。先ほど贅沢がどうのと言っていたが、私はルクレツィア程度の贅沢は問題にしておらん」


「でも、ロラン殿下は……」


「浅慮だな。我がザリア領は、伯爵領とはいえ、ウィルキア王国随一の豊かな領土だ。妻と子がどれだけ着飾ったとしても傾かん。社交界で、その豊かさを体現し、政敵をけん制するのも領地経営の大事な役割だ。これまではその意味までは伝えて来なかった、がな」


「私のわがままがお役に立っていたと?」


「まあ、そうだな」


 苦笑しながら、答えてくれた。


「それから、お前の婚約だが、ウインザー公爵の嫡男レオノールはどうだ? あるいは、お前が領を離れる前提で親族から養子を迎える予定だったのだが、それとザリア領に残るのもいいかもしれないな」


「あ、あの!」


「なんだ?」


「私、ロラン殿下のこと、諦めてません!」


 ザリア伯爵の動きが止まり、その瞳が驚きに見開かれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ