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「ほら、エド。あの露店が見てみたいわ。行ってみましょう」


 あの後、馬に乗った鬼神のような形相のお父様が駆けつけたり、オスカーにレオノールを止めに行ってもらったり、なぜか村をあげてルクレツィア万歳コールが巻き起こったりしたが、とにかく全てが終わって、日常が戻ってきた。


 グリューは、一応、私の従魔として登録しておいた。従ってくれる訳ではないが、登録しておけば、いつでもどこでも連れ歩けるという、お父様、お母様からのアドバイスだ。グリューは嫌がるかと思ったが、そういう俗世の些事は、気にもしないらしい。


「……エド。ほら、せっかく2人だけで王都を散策してるのよ? 楽しみましょうよ」


 正確には、2人と1匹だが。グリューは、空気を読んでか、後ろから大人しく付いてきている。


 エドワードは、あれからずっと落ち込んでいる。あまりに落ち込んでいるので、お母様とクラウスが、私に、気分転換してきたらと提案して、今、王都に2人でいるという訳だ。グリューがいれば、安心ということで、付き人もいない。


 しかし、困った。エドワードは、私が歩けば、付いてきてくれるが、反応は無く、ずっと俯いている。


 ……よし。私は、エドワードの手を取って、繋いだ。


「え? ……あ、あの、ルー……」


 焦ったエドワードがこちらを向く。やっと、ちょっと反応があった。構わず、繋いだ手を、ぎゅっと強く握って、歩き出した。


「エド……こんなこと言っても、白々しく感じるだろうけど、独り言と思って、聞いて?」


 歩きながら、話し出す。


「エドは、まだ12歳じゃない? しかも、ザリア家に来て、3ヶ月も経ってない。出来ないことが多くても仕方ないと私は思うよ」


 出来ないことが多いという私の言葉に、エドワードが身を硬くするのが分かるが、構わず続ける。


「今は、理想とのギャップに苦しんでるかもしれないけど。……ザリア家に来てから、エドが努力し続けてるの、ずっと見てたから。…………エドがいなかったら、私も、頑張れなかったから」


 立ち止まって、エドワードの目を見つめる。


「私は、エドなら、いつか、理想の自分に手が届くと思うよ」


「ルー……」


 エドワードは、頼りなげに視線を返す。どんな言葉をかけても、今はまだ届かないだろう。でもいい。私はずっと信じるだけだ。


「……よし。ね、あの露店見に行こう? 綺麗な装飾品がありそうよ」


 私は、話は終わったと言わんばかりに、グイグイと手を引っ張って進んだ。

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