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「ルクレツィアさまを守れ!」


 魔獣の存在を確信したメンバー全員に緊張が走る中、オスカーが指示を出し、兵士たちが守りを固める。


 ……

 …………

「攻めては来ませんね。……予定通り、様子を見に行きます」


 しばらく経っても、魔獣が襲ってこないことを確認したオスカーがそう言い、兵士1人と前に進んでいった。


 ……

 …………

「……緊張しますね」


 無言の空間に耐えられなくなったのか、クラウスが小声で話しかけてきた。


「そうね。…………もし最悪の事態になったら、全員死んでしまうということも、あり得るのかしら……」


 小声で返す。現実感が無いが、この世界での危険とは、そういうものなのだろう。


「……なにがあっても、お嬢様だけは無事に脱出させますよ。……オレの命に代えても」


 クラウスは、急に真面目な顔になる。


「あら、いざという時は、私を盾にするのでは無かったの?」


「あれは、空気を軽くするための冗談です」


 照れ臭くて、茶化してみたが、クラウスは真剣に続ける。


「逃げるときは、オレ達のことは気にせず、後ろを振り向かず、全力で走ってください。……転んじゃダメですよ」


 クラウスは、笑顔で言った。……そんな覚悟をしているとは、思わなかった。思わず目が潤んで、答えに躊躇していると、オスカーが戻ってきた。


「……かなり、状況は悪いですね……」


 オスカーは、若干、青い顔をしながら報告してきた。


「視認できるギリギリの距離まで接近しました。対象の魔獣は、グリフォンだと思われます」


「グリフォン?!」


 クラウスが、驚愕の声を上げる。


「上半身は鳥のようで金色に輝き、下半身は獣のようで白く穢れが無い。……伝承とも一致しますし、グリフォンで間違いないかと」


 オスカーは、深刻そうに頷く。


「……グリフォンて、強いの?」


 2人の深刻な様子に不安になって尋ねる。


「実際に戦った記録は、ザリア防衛隊には無いのですが、伝承では、魔獣の中でも、かなり強力だと言われています。このメンバーで、勝つのは難しいでしょう。今のところ、大人しくしていますが、金を好むと言われていますので、採掘を始めれば、攻撃される可能性がありますね」


「……ルクレツィアさま、それで、どうされますか? 確実なのは、金鉱の閉鎖を続け、王都の騎馬隊に応援を頼むことですが」


 オスカーは、説明をした後、決断を迫ってきた。


「だが、それだと金鉱を1週間は閉鎖することになる。経済的な打撃は避けられないぞ」


 クラウスは、懸念を示す。


 ……どうしよう。グリフォンなんて、見たこともないのに、どうしたらいいかなんてわからない。


 ……

 …………

 うん、よし決めた。


「……わかったわ」


 私の呟きに、全員がこちらを振り向く。


「そのグリフォンを見て決めます。高位の魔獣なら、意思の疎通が取れるかもしれないし。……オスカー、グリフォンを視認できる距離まで案内してちょうだい」


「ルクレツィアさま、それでは安全を確保できません!」


 私の決定に、オスカーが反論してくる。


「金鉱再開の決定権は、私にあります。決断に必要な条件を満たすために、わざわざ、ここまで来たのではなくて? この目で見ない限りは、決断できません」


 ここまできて、なにもわからない状態で、領地経済に打撃を与えるつもりはない。引かない覚悟で、オスカーを睨みつける。


「……わかりました。ただし、危険だと判断したら、引きずってでも撤退しますよ」


 オスカーは、ため息を一つ吐くと、そう言った。

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