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「ルクレツィアさま、もう少し後ろ、後衛の兵士の前まで下がってください」


 ここは金鉱内部。私とクラウスの周りを、5人の兵士が守りながら先に進んでいる。できることもない私は、オスカーからの指示に大人しく従って、歩く位置を調整する。


 レオノール、エドワード、ルイ先生も、ついて行きたいと言ってくれたが、守りきれなくなるという判断で、オスカーが却下した。クラウスも、危うくついてこれなくなるところだったが、私が、最終判断のためにどうしても必要だからと粘って、なんとか同行を許してもらった。


 気軽に手放した指揮権とやらのせいで、私の裁量の幅は、ほとんど無くなっていたようだ。そういうものらしい。次は気をつけよう。反省。


「住民の話では、1時間ほど歩いた先にある、最深部の採掘場所での目撃が多いようです。移動もすると考えられるので油断はできませんが、本来、ここには、獣や魔獣はいませんから、問題の魔獣と遭遇するまでは、比較的安全に移動できると思います」


 オスカーは、私のために詳しく説明しながら、油断なく周囲を見回す。


「暗くて怖いですね」


 クラウスは、なぜか私を盾に取れるような近さで、隠れるようにして歩いている。……人生かけて私を守ると聞いた気がするが、幻想だったのか。


「……ちょっと、クラウス。私を守ってくれるのでは無かったの?」


 不機嫌になりながら、聞いてみる。


「基本的には、守りますよ。……でも、今は、オレより強い兵士の皆さんがお嬢様を守っていて、兵士の皆さんにとって、お嬢様の安全は、オレの安全より優先度が高い訳じゃないですか」


 クラウスは続ける。


「だから、いざという時、お嬢様の影に隠れれば、結果的に、お嬢様の安全も、オレの安全も、守られるって訳ですよ!」


 クラウスは、これが1番の解決策だと言わんばかりの会心の笑顔で言い切った。……間違っているとは言わないが、少し、格好よさが足りないのではないだろうか。


「……クラウスさま、ルクレツィアさまの安全を守りきれないと判断したときには、クラウスさまを排除せざるを得ません。……くれぐれも、私たち第1小隊の動きを邪魔しないようにお願いします」


 反論しようか悩んでいると、オスカーが釘をさした。クラウスは、排除の辺りでビクッとしたが、意思は変わらないのか、私の後ろに隠れる。


 ……

 …………


「……もうすぐ目的地です。私ともう1人で様子を見に行きますので、ルクレツィアさまは、残りの兵士と、この柱の影に隠れていていただけますか?」


 無言のまま、歩き続けて1時間ほど、オスカーがそう言うと同時に、地響きのような獣の鳴き声があたりに響き渡った。兵士たちに緊張が走った。

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