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 金鉱に近づくと、喧騒はいっそうはっきりと聞こえた。


「責任者はどこだ! ここにいるのは、ルクレツィア=ザリア嬢、領主の娘だ。騒ぐのをやめ、説明をせよ!」


 クラウスが、代表して声を張り上げると、全体が静かになり、おずおずと責任者が出てきて、帽子を取った。


「あの、……私が、金鉱の責任者です。実は、金鉱内部に魔獣が出まして……とりあえず、入り口を封鎖して、村の警備隊を呼んでいるところです」


 ……魔獣? 聞き慣れない言葉に、クラウスに向かって首を傾げる。クラウスは、深刻そうに責任者に頷いていて、返事はない。


「それで、村の警備隊の手に余るんじゃないかってことで、領主様のとこまで早馬を出す出さないで揉めていたんです。……でも、助かりました! 皆さんが来てくれたからもう安心ですね」


 金鉱の責任者は、一転して、にこにこと期待するようにこちらを見てくる。……これ、私に期待してるんだろうか……いやいや、魔獣がなにかはわからないけど、私に出来ることなんかないよ?!


 クラウスに小声で話しかける。


「これ、どうするの? ……そもそも、魔獣ってなに?」


「……いわゆる魔法生物ですね。高位の魔法生物の中には意思の疎通が出来るものもいると聞きますが、大抵は、意思の疎通が出来ず、好戦的で、かなり強いです。……しかし、厄介なことになりましたね」


 クラウスは、深刻そうな顔のまま、続ける。


「金鉱は、ザリア領の経済の要です。閉鎖を続ければ、それはそのまま経済的な打撃になります。ただ、ザリア領の兵士は、防衛に特化していて、場合によっては、王都に応援を頼む必要があるかもしれません」


 ……ザリア領に、兵士とかいるんだ。クラウスの深刻そうな説明を聞いて、場違いな感想が頭をよぎる。


「とりあえず、金鉱内に派遣できる程度の数の兵士を呼びましょう。……ルイ先生、頼めるか?」


 ルイ先生は、頷くと、手綱を引いて馬を反転させた。馬は一声嘶くと、私たちと一緒にいた時とは、全く違う速さで、駆けていった。


「……さて、戻ってくるまでの間、状況の確認をしましょうか」


 私たちは、馬から降り、金鉱の責任者の話を聞いた。


 ……

 …………

 その後、魔獣に遭遇したときのことを話してもらったが、恐ろしい鳴き声を聞いたという者、鳥だったという者、いやいや獅子だったという者。……皆、余りの恐怖にすぐにその場を離れたということで、詳細は分からずじまいだった。


 できることもなく、手持ち無沙汰で待っていると、ルイ先生が5人程の兵士らしき人を連れて、戻ってくるのが遠目に見えた。


「……少なくない?」


「金鉱内は、狭いですからね。恐らく精鋭を連れてきたでしょうし、問題ないですよ」


 思わず漏らした感想に、クラウスが答えてくれる。


「そっか、じゃあ、もう安心ね。私たちは、兵士の探索が終わるまで待ってる?」


 それまで、端っこでお茶でもして待ってよう。そんな気軽さで聞いた。


「……少々、危険ですが、一緒に行くしかないですかね。状況をみて、金鉱再開の判断をザリア伯爵に代わって出来るのは、お嬢様しかおりませんので」


 クラウスは、不本意そうに話した。


 ……

 …………

 え? 私も行くの?!

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