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「……というわけなの」


 ここは、ザリア家の中庭、春の薔薇の咲き誇る中、お母様を交えて、これまでの事情を話す。


「そうね……正直、主人公補正とか言われても、よくわからないのだけれど」


 お母様は、思案顔で答える。


「ですよね! とりあえず、お嬢様を、お医者様にみてもらいましょうよ」


 クラウスは、自分の身を守るため、必死に話を逸らそうとしている。


「その、アメリアちゃんが、ルーちゃんの敵になり得るってことは、把握しました」


 お母様の目が、キラリと光る。


「クラウス。会ってみてどう感じたのか、正直に、教えてちょうだい」


「はい。特になにも感じなかったです」


 クラウスは、かしこまって答える。


「正直に、ね」


「……はい。……あの、……フワッとしてて、天真爛漫そうで、可愛いなって思いました!」


 お母様が念を押すと、諦めたのか、正直に言い切った。


「やっぱり……」


 こうして、1人ずつ、側を離れていくんだ……私は、悲しくなって呟く。


「残念ね……裏切られる前に、幽閉しておきましょうか?」


 お母様も、本当に残念そうに提案する。


「いやいや、普通の男性なら、可愛い女性と会ったらそんなもんですよ! 他に好きな人がいるのに、それだけで好きになったりはしません! 冤罪です! 断固、抗議します!」


 クラウスは、必死で抵抗する。


「あら、好きな人がいるの?」


 意外だ。思わず、確認する。


「……お嬢様は、本当に、残念ですよね」


 クラウスは、がっくりと呟いた。


「わたくしのは冗談よ。空気に乗ってみただけ」


 お母様は、マイペースだ。クラウスは、冗談と言われて、さらにがっくりしている。


「そんなことより、そのアメリアちゃん、特別な力が無くても、ルーちゃんにとっては、ちょっと厄介よね」


 お母様は、切り出した。


「癒しの力を持つ光魔法の使い手は、100年に一度見つかるかどうか、というくらい貴重な存在だもの。今は特に身分が無くても、王家の血筋に取り込みたいという動きは、必ず出てくるわ」


「そうなれば、婚約者のいる第1王子よりも、まだ決まっていない第2王子に、話がいくでしょうね」


「そんな!」


 思わず、叫ぶ。


「それと、……クラウス。正直に答えてね。もし、ルーちゃんと知り合っていないとして、アメリアちゃんが、ルーちゃんにいじめられたって泣いたとします。ルーちゃんは、やっていないと言ったとして、どちらを信じる?」


「お嬢様です」


「正直に、ね」


 お母様は、笑顔で念を押す。


「……あの、2人のこと、よく知らなかったら、アメリアさんを信じるかも……しれないです。彼女、なんかフワッとしてて、悪いこと考えなそうに見えましたし、お嬢様は、よく知らないと、策略を巡らしてそうに見えますし……」


 クラウスは、申し訳なさそうに話した。


「ね。主人公補正とかいう力があるかはわからないけど、実際、見た目から来る印象の問題を抱えているザリア家と、相性が悪いのは確かよね」


「……どうしたらいいんでしょう」


 お母様に、現実を突きつけられて、思わず、途方にくれる。


「こちらは、印象を良くする作戦を続けるしかないわよね。それから、政敵が、アメリアちゃんを利用しようとする可能性もあるから、一応、彼女を監視しましょうか」


 お母様は、冷静だ。


「あとは、……ルーちゃん、ロラン殿下に会いに行かなくていいの?」


「……え?」


 思いがけない一言に、思わず声が出た。


「舞踏会のとき、最後の様子がおかしかったからか、お見舞いのお花が届いてるわよ。部屋に飾ってあったでしょう? 説明に伺ったらどうかしら」


 ……

 …………

 どうしよう。アメリアのことがショックすぎて、ロラン王子のこと、すっかり忘れてた。

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