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「……お嬢様、本気でその格好で行くんですか?」


 クラウスは、疑わしげな表情で聞いてきた。


「なによ。いつもの格好より目立たないでしょ?」


 アメリアの元に潜入するため、嫌がる侍女から普段着を無理矢理借りて、着込んでいる。彼女には、後で別の服をプレゼントしよう。


 長すぎる髪は、編み込んでお団子にした。化粧も薄いし、どこからどうみても町娘だ。


「……いやいや、バレリーナが舞台に出るのかって言うくらい、一種、異様な存在感ですよ」


 クラウスは、苦笑しながら答える。


 失礼な。足元まで隠れるロングスカートを着ているのに、バレリーナな訳がない。自分で自分の姿を再確認する。うん、やっぱり、どこからどうみても町娘だ。


「じゃあ、どうすればいいのよ。いつもの格好のほうが目立たないっていうの?」


 そうは言っても、クラウスの意見も気になる。他の案があるなら乗ってみてもいい。


「いや、間違いなく目立ちますね」


 クラウスが、断言する。


「ほら。だから、いいの。これで」


 特に案もないようなので、気にせず計画を進めることにする。


「……まあ、お嬢様がそれでいいって言うなら、いいですよ。……ところで、後ろにいる屈強な男2人は、どうしたんですか?」


 クラウスは、ため息をついてから、聞いてきた。


「傭兵よ」


「あれ? 今日って、そんな不穏なことするんでしたっけ?」


「しないわよ。クラウスは、教会にいるアメリアに、ちょっと挨拶して、世間話して、帰ってきてくれればいいの」


 私は、説明を続ける。


「この方たちは、クラウスが敵の手に落ちたときのために、お父様に泣きついて、雇ってもらったの」


 お父様は、必要性について疑問顔だったが、私の真剣な説得に、なんとか折れてくれた。


「……ザリア伯爵もなにをしてるんだか…………いや、ちょっと待ってください。今日会うアメリアって人は、武道の達人なんですか? そういう情報は、先に教えてくださいよ」


 クラウスは、急に不安になったのか、慌てて確認してくる。


「そうじゃないわよ。でも、主人公補正で、クラウスがどんなに気をつけていても、一目で恋に落ちちゃうかもしれないじゃない。そうしたら、とりあえず力で連れて帰ろうかなって」


「……傭兵の方々は、恋に落ちないんですか?」


「それはわからないけど、攻略対象じゃないから大丈夫かなって」


 うん、大丈夫。たぶん、きっと。


「……今日の作戦やめて、一旦、お医者様に相談しません? 主人公補正とか、攻略対象とか、ちょっと訳が分からなすぎるんですけど……大丈夫。オレだけは、お嬢様のこと見捨てたりしませんから」


 クラウスは、私のことが心配になってきたのか、優しく諭してきた。


「ダメ! 約束したじゃない。とにかく行くわよ。傭兵さん、お願いね」


 ここを乗り越えないと私は不安でダメになる。そう確信している私は、嫌がるクラウスを連れて出発した。


「こういう強引なとこ、マデレーン奥様に似てますよね……」


 クラウスは、傭兵に脇を固められ、半ば引きずられながら、諦めたように呟いた。

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