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 アメリアが現れてからのことは、正直、覚えてない。気付くと、エドワードに連れられて、家路についていた。


 ……もうお終いだ。ロラン王子も、レオノールも、エドワードも。クラウスだって、彼女に声をかけられたら、たちまち恋に落ちるのだろう。どれだけ頑張っても、無駄だったんだ。みんなから嫌われて、見捨てられて、孤独の没落コースだ。


 何もする気が起きなくて、自分の部屋に、ただただ閉じこもった。


 朝になっても部屋から出てこない私に、心配になったのか、クラウスが扉の外から声をかけてきた。


「ルクレツィアお嬢様、どうされたんですか? ……皆、心配してます。出てきてください」


「……出たくない」


 小さな声で返す。


「……大丈夫ですか? ロラン殿下になにか言われました? ……ちょっと、本気で懲らしめてきます」


 小さな声も聞き漏らさず、クラウスが言った。


「えっ? ……違うから! そんなんじゃないの!」


 私は、慌てて扉を開けると、クラウスは、動こうともせずに、私を待っていた。


「……騙したわね」


 私は、ふてくされながら、部屋に入り込むクラウスを睨む。


「エドワード様から、昨日の出来事は、大体聞いていましたから。1ヶ月しか準備できなかったにしては、大成功じゃないですか」


 クラウスは、部屋のテーブルに簡単な朝食の準備をしながら、言ってきた。


「ただ、最後に出てきた女性を見て、真っ青になっていたと言っていましたよ。……お知り合いでしたか?」


 クラウスに言われて、顔から血の気が引く。話そうとして、涙が滲んで、声が震えた。


「……っ、今まで、必死で頑張ったけど……彼女が本気になれば、私では敵わない。彼女は、主人公で、私は悪役令嬢だもの。ロラン殿下も、レオさまも、エドも、みんな……クラウスだって、彼女を選ぶわ」


 話しているうちに、膝から力が抜けていく。


「最後には、私の味方はいなくなる……もう、お終いだわ……」


 涙が止まらなくなって、ベッドに突っ伏した。


「……馬鹿にしてるんですか?」


 クラウスは、そう呟くと、私の腕を掴み、体を抱き起こして、無理矢理、視線を合わせてきた。


「お嬢様は、……私が、本当にそんな、どこの馬の骨ともわからない女性に熱を上げて、お嬢様を見捨てると、本気で思っているんですか?」


「常にお嬢様のそばにいて、これからも、……オレの人生、全て賭けて守っていこうっていうのに……今までだって、そうしてきたのに……それを信じられないって言うんですか?」


 私の腕を掴んでいる手に、力がこもる。


「……それでも、あんたが不安に思うなら、オレがその女、殺してきてやろうか?」


 クラウスの不穏な発言に、びっくりして涙が止まった。


「そんなこと望んでない!」


「じゃあ、オレに、なにを望む?」


 いつものクラウスじゃないみたいだ。軽口をたたいてくれないと、どうしていいかわからない。ただ、私は……


「ただ、いつまでもそばにいて欲しいの……」


 まるで告白みたいだ。自分の気の弱さに、情けなくなって、また涙が出る。


「いますよ。……ずっと、そばにね」


 クラウスは、雰囲気を和らげると、腕にかけていた手を離し、優しく抱きしめてくれた。


 ……

 …………

「クラウス……1つお願いがあるのだけど」


 しばらくして、落ち着いた私は、涙を拭きながらクラウスの腕から離れると、切り出した。


「なんでもお聞きしますよ、お嬢様」


 クラウスは、優しく言った。


「クラウスのことは信じるけど、1回、アメリアに会ってみてくれない? 一目見ても、恋に落ちないってことを、確認したいの」


 ……

 …………

「……お嬢様は、本当に、空気を読みませんよね」


 クラウスは、唖然とした後、諦めたように呟いた。

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