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「……もっと踊っていたいけど、パートナーがいるのに、何曲も踊れないからね。ほら、あそこにエドワードがいるから、交代しよう」
音楽が終わると、レオノールはそう言って、エドワードのところまでエスコートしてくれた。
「レオさま……ありがとうございます」
「いいんだよ。またね、ルー」
レオノールは、爽やかに笑うと、離れていった。あっという間に他の女性に囲まれて、見えなくなった。
「エド、寂しくなかった?」
レオノールを見送ると、気持ちを切り替えて、エドワードに振り返る。
「大丈夫だよ。あの、ルー……ロラン殿下とのダンス、すっごく綺麗だったよ」
この1ヶ月、あの時のために努力したことを知っているエドワードは、真剣な目で褒めてくる。
「ありがとう。……ほら、次は一緒に踊りましょう」
嬉しくなって、エドワードに手を伸ばす。いつのまにか、早いリズムの音楽に切り替わり、会場は活気が出ていた。
「……エド。あれ、やりましょうか」
「え? ……大丈夫?」
「大丈夫! 行くわよ?」
手を組んでホールドした後、タイミングを合わせて、会場の端まで、一気にステップを踏みながら駆け出した。早いリズムに合わせて、ジャンプ! 手を離して足踏みなんかもしちゃう。
ふふ、楽しい! 息を切らしながら、笑いあって踊りを楽しむ。ルイ先生のレッスンで、唯一の息抜きとして2人で考えたクイックステップだ。最後に、クルッと回って、エドワードに倒れこむようにしてポーズを取ると、周りから拍手が起きた。
「目立っちゃったかしら……」
エドワードに起こしてもらいながら、不安になって話しかける。
「目立つに決まってるじゃん。もー、ルーは考えなしなんだから。勢いがあるとこは、お義母様に似てるよね」
少し立場を忘れていたようだ……冷や汗をかきながら、周りの拍手に礼を返す。
「ほら、ロラン殿下のところまで送るから、早く移動しよう。じゃないと、ダンスの申し込みがたくさん来ちゃうよ」
エドワードに促され、ロラン殿下のところまで戻った。
「あれが、そなたの新しい婚約者候補たちか」
エドワードが離れると、ロラン王子が聞いてきた。
「はい。ご配慮いただき、感謝します」
「よい。……私といるより、いきいきと楽しそうであったな」
「……え?」
思いがけない言葉に、思わず聞き返したが、返事は無かった。
そのとき、突然、ファンファーレが鳴り響き、奥から陛下に手を取られ、女性が出てきた。
「サプライズゲストだ」
ロラン王子が教えてくれた。
「最近、貴重な光魔法の使い手が見つかったらしい。いつ紹介があるかと思っていたが、このように派手に見せびらかすとは、陛下も酔狂だな」
俯きながら出てきた女性が顔を上げた。……見開くと零れ落ちそうな青い眼、ふわふわでボブの金髪。可愛らしいピンクのドレスに身を包んだ女性は、見間違いようもない。
ゲームの主人公、アメリアの登場だ。




