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音楽が終わり、拍手が起きた。皆に礼をして、揃って下がる。
新しい音楽が始まり、皆が踊り始めた。
……せっかく、あれだけ特訓して、ロラン王子にも褒めてもらえたのに、また、面倒な思いをさせてしまった。
下を向きそうになる目線を、頑張って上に保つ。そんな、落ち込んでいる私の気持ちを知ってか知らずか、ロラン王子が呟く。
「……小さい頃は、周りの人間が、全て壁のように思えてな。やりたいことは、全てダメだと言われ、抵抗すればするほど、壁は高く、硬くなった。」
「打ち破るには、高く硬い壁よりも、強く大きくなれば良い、そう思っておったのだがな。その家庭教師によると、違うらしい。……いちいち生意気な口をきくのだが、あれほど打たれ強いものも珍しい。……そのうち、私自身の配下としてもよいかもしれぬな」
ロラン王子は、苦笑しながら続けた。
「あの、……怒っていらっしゃらないのですか?」
不思議に思って、聞いてみる。
「怒る? ……そなたをか? ふむ、……確かにな」
ロラン王子は、言われて初めて気付いた、というように、考え込んでしまった。やぶへびだったろうか……
不安な気持ちになりながら待っていると、見知った顔が近付いてきた。
「ロラン殿下。パートナーをお借りしてもよろしいでしょうか?」
レオノールが、ロラン王子に礼をする。
「無論だ」
ロラン王子は、今、気付いたというように、ハッと顔を上げると、答えた。
「ありがとうございます。……ルクレツィアさま、私と踊っていただけますか?」
レオノールは、ロラン王子の許可を取ると、今度は私に声をかけ、手を差し出した。私は、ロラン王子に目線で礼をしてから立ち上がり、答えの代わりに、レオノールの手を取る。
レオノールは、私の腰に手をかけると、場の中央に向かって足早に進む。
「レオさま、少し早いです」
声をかけるが、レオノールは無言だ。
「レオさま……?」
レオノールは無言のまま、音楽に合わせてダンスの体勢になると、私をやや強引にホールドし、踊り始めた。
「レオさま? ……どうされたんですか? 少し痛いです」
「……ああ、ごめん。……ルー、今日はとても綺麗だね」
レオノールは、やっと私の目を見ると、笑顔になった。踊りながら話し出す。
「さっきのダンスも、とても素敵だった。誰もがルーを見ていたよ。……あんまりロラン殿下とお似合いだったものだから、ちょっと嫉妬しちゃったよ」
「レオさま……」
レオノールは、私を見つめながら踊り続ける。私は、申し訳ない気持ちになって、目を伏せる。
「ルー……ルーは、気高くいれば、いいんだよ。ごめんね。今は、ダンスを楽しもう」
レオノールは、笑顔で、今度は優しくリードを始めた。




