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「お母様、髪、ほつれてない?」
私は、鏡の前で落ち着かなげに、髪を確認する。
「大丈夫。綺麗よ、ルーちゃん。うーん……そうね、ネックレスは、これがいいわね」
お母様は、いつでもマイペースだ。
「ドレス似合ってる?」
お母様の前で、くるりと回る。
「もちろん。一緒に選んだんだもの。お母様、自信があります」
お母様は、自信ありげに、私の目を見て頷いた。
今日は、初めてロラン殿下と一緒に出席する舞踏会当日。朝からそわそわしていたが、昼を過ぎると舞踏会の準備が始まった。
ドレスは、絹で出来た薄めの青地に、白いレースが随所にあしらわれた美しいものだ。レースのハイネックが、ルクレツィアの気品を引き立てるが、ふんわりしたスカートのシルエットと合わせると、14歳らしい可愛らしさもある。
銀色の髪は、緩やかにまとめられてアップにしてあり、庭で取った白いバラが一輪、挿してある。後れ毛と、繊細な細い銀のネックレスが、青いドレスに映える。最後に、ドレスと同じ生地にレースをあしらった美しい扇子を持って完成だ。
「ほらほら。もう一度、くるっと回ってみて。うん、綺麗。完璧ね」
「お母様、ありがとう。……ルイ先生にも見せて来る」
ドアを開けると、廊下で待っていてくれたルイ先生と目が合う。
「大変お綺麗ですよ、ルクレツィアさま」
ルイ先生が優しく笑って、ドキッとした。いつもとは違う、初めて見た優しい笑顔のまま、ルイ先生は続ける。
「ルクレツィアさま、今日までに必要なことは全て教えました。これからも、意識せずにできるまで鍛錬する必要はありますが、今日の舞踏会で、どなたよりも、ルクレツィアさまが輝くことを、私が保証します」
「……っ、ルイ先生! ……ありがとうございます!」
先生からの、思わぬ免許皆伝の知らせに、舞い上がった。
「さあ、エドワードさまが、待っていますよ。いってらっしゃい」
嬉しくて思わず顔がにやけたまま、エントランスに行くと、エドワードが迎えてくれた。ロラン殿下は、王族として登場するため、その後、合流する予定だ。それまでのエスコートは、エドワードがしてくれる。
「……ルー! あ、あの……すごくきれいだよ」
エドワードは、私と目が合うと、途端に赤くなった。褒めた後、さらに真っ赤になる。
「ありがとう。エドも素敵よ」
お世辞ではない。燕尾服と白い蝶タイをして、髪をふんわりオールバックにしているエドワードは、いつもより大人びていて、色気もある。
エドワードは、咳払いすると、しっかりと背を伸ばし、かしこまって手を差し出した。
「ルクレツィアさま、本日は、エスコートさせていただき、光栄です。お手をどうぞ」
「ふふ。……ありがとうございます、エドワードさま。本日は、よろしくお願いします」
私は、笑顔で手を取った。




