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「え? あの? でも、1年かけて少しずつ評判良くしていこうって話だったんじゃ……なんで、急に告白なんて」
完全に油断してました。心臓がドキドキしてくる。
告白……告白ってなんだっけ? あの、どーんとぶつかるやつ? ……いや、むしろ、今の状態だったら、物理的にぶつかったほうが勝率高いんじゃ?? 段々、頭に血が上ってきて、訳がわからなくなってきた。
「1年かけてルーちゃんを見て欲しいって話も、ルーちゃん本人が話したほうがいいと思うの。ロラン殿下にも陛下にも抗議はしてあるから、前回のようなことにはならないと思うわ」
お母様は、冷静だ。武器を持って突撃して来い、という訳ではないらしい。
「どちらにしても、強く拒まれている現状では、なにをどう努力しても効果は薄いわ。なにを始めるにしても、ロラン殿下には、最低限、ルーちゃんに対する偏見を無くしてもらいたいの。そのためには、まずルーちゃん自身が殿下に向き合わなくてはね」
お母様は、微笑みながら続ける。
「大丈夫。男性は単純なんだから、好きと言われて意識しないはずないわ。まして、好きだと言ってきた女性が、認めてもらうまではと身を引いて、自分のために努力しているのよ。気にならないはずがないでしょう。そうよね、クラウス」
ずっと黙って控えていたクラウスに、突然、話を振る。
「……お答えしかねます」
「あら、でもクラウスだって、ルーちゃんに好きと言われたらクラッとくるでしょう? 一般的な男性としての意見でいいのよ?」
「お答えしかねます」
クラウスが単純かどうか、教えてはもらえないようだ。
でも、そうなの? そんな単純な話なの? ……私を意識して、こちらをチラチラ見るロラン王子を想像して、顔がにやける。
……あー、部屋に戻りたいなー。今なら、この妄想だけで1年は生きていける。まずは枕に、この衝動をぶつけるのだ。
「まあいいわ。ルーちゃん、貴方のこれからの人生を決める時間はたった1年しかないのよ? 納得できる結果を得るために、今、このときから覚悟を決めて、全力で努力する必要があるのではなくて?」
現実逃避している場合じゃなかった。
……でも、確かに。なんだろう、この気持ち。お母様が言うと、本当に今、告白しなければ、後がない気がしてくる。
「お母様は、告白すれば可能性が高まると、そう思うのですね?」
「そう思わなければ提案しないわ」
「わかりました! やってみます」
正直、不安しかないが、やってやろうじゃないか!
「よかったわ。じゃあ、ロラン殿下にも陛下にもお伝えしておくから、いってらっしゃい」
……
…………
「え? いまからですか?」
「そうよ」
「え? でも、なにを話すかも決めてないですし、そもそも、いきなりすぎて覚悟が……せめて明日にできませんか?」
「明日にしてもいいけど、きっと色々悩んで、夜も眠れなくて、なにも決められないまま、ふらふらの状態で行くことになるわよ?」
……否定できない。
お父様に懇願するように顔を向けるが、ただ頷かれた。……そうじゃないのよ。
……クラウスなら!
パッと振り向くと目が合った。
「クラウスはどう思う? 今日、突然行くのは迷惑よね?」
「私は、今回の件、そもそも全面的に反対です」
なるほど。頼りにならなかった。どおりで会話に参加しないはずだ。私は、部屋に閉じこもっていればよかったと、初めて後悔した。




