ワガママなお願い
二人の関係性が曖昧なので近いうちに決着をつけたいという気持ちがわいてしまいます・・・
森での一件があったあと、俺とルーラは少し早めにルーラの家に戻ることにした。
リンに関してはこの森とは反対の山に転移させたのでしばらくこの場所が王国の連中に見つかることはないだろう。
問題は俺の足取りをどこまで知っているのかだったが、周辺には他に国の兵士らしき気配はなかったのであの様子だとリンの独断専行だったのだろう。
「あの、ウタイ様。」
そんなことを考えているとさっきまで黙って何かを考えていた隣のルーラが控えめに声をかけてきた。
「なに?」
「あの、先程はすみませんでした!」
「え、何のこと?」
突然謝るルーラに困惑してしまう。が理由を聞いてみるとどうやら俺の前で俺を差し置いてリンに怒鳴ってしまったことに対してらしい。ほんとにこの子は・・・。
「ルーラ。ありがとうな。」
「え、あ、ありがとうですか?」
「うん。だって俺のためにあれだけ怒ってくれたんだろ。だからありがとうだよ。」
おそらく俺はリンの台詞に内心怒ってはいたとは思うが、ルーラのように本気で怒ることはできなかっただろう。
「そんな、だって酷いじゃないですか。よりにもよって傷ついてるウタイ様に向かってあんなことを・・・。」
「ルーラ。」
俺はルーラの頭にてを乗せて撫でる。
「ウタイ様・・・。」
「俺のために本気で怒ってくれる人がいる。それだけで充分だよ。それに・・・」
俺は精一杯の笑顔でルーラにほほ笑みながら本心を口にした。
「今の俺にとって大事なのはルーラだからな。」
「・・・はぅ~。」
すると何故か可愛く呻き声をあげながら顔を真っ赤にしたルーラ。
そんなルーラを見ながら考える。
遠くないうちにおそらくこの場所はばれてしまうだろう。
離れるなら早めがいいのだろうが、ルーラを連れていくことについてやはり心のどこかで考えてしまう自分がいた。
ルーラの安全を考えるなら俺はルーラの側にはいない方がいいのではと。
「嫌です。」
そんな風に考えていたらさっきまで真っ赤な顔で呻いていたルーラが真剣な表情でこちらを見ていた。
「嫌って・・・」
「ずっと私をお側においてください。私を・・・。」
そこで区切ったルーラは泣きそうな表情で言った。
「私を一人にしないでください!」
その一言を聞いたとたん俺はルーラを抱き締めていた。
「ウタイ様・・・」
「ああ、もちろんだ。」
今更なことだが、俺にはルーラしかいない。そして今のルーラにも俺しかいない。そんなことに遅く気づく。
だからもう迷うのはやめにした。
俺はルーラに自分勝手でワガママなお願いをした。
「ずっと一緒に、俺の隣にいてくれ。ルーラ。」
「・・・はい。はい・・・。」
涙を流しながら嬉しそうに頬笑むルーラ。
そんなルーラを優しく抱き締めながら俺はルーラが泣き止むまでずっと一緒にいたのだった。