エンカウント
迷走中ー。
翌日、ルーラの治癒魔法と献身的な看病により大部回復した俺は辺りの散策に出掛けていた。
「いい天気でよかったですね。ウタイ様。」
そうルーラとともにだ。
最初は一人で出掛けるつもりだったのだが、顔が割れている俺が一人で出歩くのは危険だとルーラに止められたため妥協案としてルーラ同伴の散策になった。
「しかし、見事なものだな。」
「何がですか?」
「ルーラの変身魔法だよ。」
ルーラは今変身魔法で普段のウサミミやウサシッポを隠して完全にどこにでもいそうな村娘になっていた。
「俺も一応簡単な変身魔法は使えるけどルーラのは本当に完璧だな。」
「そ、そんなことはないですよ。」
少し照れた感じで謙遜するルーラ。
「ウタイ様も凄いですよ。変身魔法だけじゃなくてなんか普段と雰囲気が違って別人ぽく見えるというか・・・。」
「まあ、俺のは魔法というより技みたいなものだしな。」
俺は若干変身魔法を使いつつ一目ではバレないように気配の濃さを変えていた。なんか人間離れしてるとか言われそうだけどこの世界での勇者なら当たり前にできるのだ。
「それでも凄いです。さすがはウタイ様です。」
「・・・あー、あと外ではあんまり名前は呼び過ぎるなよ。今はいいけど人がいるときなんかは特にな。」
褒められて照れ臭くなった俺は外での呼び方について注意する。
するとルーラははっと、した後に申し訳なさそうにした。
「すみません。ウタ・・・えっとなんて呼べばいいんでしょう?」
「うーん。ルーラの呼びやすいのでいいけどなんか希望ある?」
うーん。と悩んだ後にルーラは閃いたとばかりに笑顔で言った。
「えっと、ではご主人様とかは。」
「何故にそうなった・・・。」
それではまるで主従関係のようではないか。
若干ぐっときてしまったのは内緒だ。
「ですが、それ以外には思いつきませんし、それにこれならバレにくいのでは?」
「バレにくい?」
「『勇者は奴隷を持たない。』という固定観念からですよ。」
そう。よくファンタジー系の主人公だと奴隷とか持ったりするやつもいるだろうが、この世界では勇者は基本的に奴隷を持ってはダメなのだ。イメージ的な問題で。
「まあ、好きに呼んでって言ったのは俺だしな・・・。」
むず痒いが仕方ないかな。
「ではご主人様。行きましょう。」
いつもと雰囲気の違うルーラが笑顔で俺にそう言った。
森の中で程よい日光が心地よい時間に俺はルーラとともに散策。一昨日までは考えものしなかった現実に不思議と頬が緩む。
「見つけたぞー!勇者!」
そんな雰囲気をぶち壊す奴が現れるまでは。