あなたとともに
ウサミミはいいぞ~(言いたいだけ)
目が覚めるとまず見えたのは知らない天井だった。
一瞬状況に戸惑うが思い出す。
「そうか・・・。俺は・・・。」
ウサミミの天使に出会った。
そしてその天使に助けられた。
夢かと思うような光景だった。
「まあ、さすがに天使は夢だよな・・・。」
起き上がるために体を起こそうとする。
そこで違和感に気づく。手に温かく柔らかな手触りの・・・そうまるで人の手のようなものがある気がした。
「って、そのままずばり当たってたわけかな?」
首をひねり左手をみると、俺が寝ている側で俺の左手を握りながら寝ていたウサミミ少女がいた。
ウサミミ少女は無防備な寝顔で寝ていた。
年齢的には俺と同い年か、俺より幼い印象を持っていて、青い髪とウサミミ、体つきは出るとこは出ていて引っ込むところは引っ込んでいる、理想的な、それこそ絵にかいたような美少女だった。
年頃の娘が若い男の前で無防備に寝ているのは正直感心しないが、どうやらこの子が俺を助けてくれたうえに自宅らしき場所まで運んでなおかつ看病してくれたようだった。
外をみると既に日が高い位置だった。
一体どれくらい寝ていたのか分からないが、俺が助けられたのが真夜中だったから早ければ半日ってところかな?
「う~ん。」
そんな風に考えていたらウサミミ少女が身動ぎしていた。
うっすらと目があき、思考が固まってきたのか起きている俺をみて、嬉しそうな表情をした。
「勇者様!無事だったのですね!よかった・・・。」
「えっと、君が助けてくれたんだよね?ありがとう。でもなんで俺なんかを?」
正直そこがわからなかった。
この子とは初対面のはずなのに何故助けてくれたのか?俺を助ければこの国を敵にまわすようなものなのに何故?
するとウサミミ少女は
「覚えてないかもしれませんが私はあなたに昔助けて貰いました。そんなあなたの為に動くのは当然のことです。」
「昔会ったことがあるのか・・・」
正直まったく思い出せない。
すると少女はイタズラっぽい笑みを浮かべながら何か呪文を唱えた。
だんだんと少女の姿が変わっていき、そして現れたのは耳のない小柄な女の子だった。
「これならわかりますか?」
「もしかして、あの時に助けた村の子か?」
召喚されてから一ヶ月くらいたった頃に寄った村で身寄りのない子供を大量の魔王軍の魔物から守ったことがあった。
名前は確か・・・
「ルーラなのか・・・?」
「思い出して下さったのですね!」
「ああ、いやでもなんで?」
なんで姿が変わったのか。正直少し考えればすぐに出そうな答えを間抜けにも混乱していた俺は聞いてしまう。
「簡単ですよ。この世界では兎人属は住みにくいですから。」
少し儚げな表情のルーラ。事実その通りでこの世界は兎人属は種類が少ない上に差別されやすいのだ。
「でもいいのか?俺を助けたこともそうだけど、自分の正体を俺にあかして。」
正直そこが一番気になる。
いくら命を助けられたとはいえ俺なんかを助けても何の利益もない。
「勇者だからこそです!」
ルーラは少し怒ったような口調で言った。
「確かに今、勇者様は世界の敵になってしまったのかもしれません。ですが、私はあなたに助けられました。その事実に変わりはありません。それに・・・」
そこで一度言葉を区切ると、ルーラは頬を赤らめながら優しげな表情で言った。
「私はあなたをお慕い申し上げていますから。」
「ルーラ・・・」
ルーラの言葉に俺は涙ぐみそうになる。
この世界にきてから、いや、前の世界でも誰からもこんなにストレートで真っ直ぐな好意を向けてもらえたことはなかった。
だからこそ俺はこの時の少し涙ぐみながらも心にこの少女を守りたいという感情が芽生えた。
それと同時に異性としての愛おしさも芽生えたが、そっちに気づくには少し時間がかかった。