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「あーあー、ヒドいね、こんなになって。
でも君も君だ。反撃しようとは思わないのかい?」
場違いに無邪気な声に、ハッとして顔を上げた。
異様な一ツ目の獣が、私を見つめているのが見える。
「ひっ!?」
短く悲鳴を上げつつ、飛び上がった勢いそのまま後退する。
「なんだ、回避行動がとれるんじゃないか」
一ツ目は一歩こちらへ踏み出した。
「はじめまして、嘉埜。
僕は君の監視者、無害なたぬきだよ」
「たぬき?」
私はその異形の一ツ目をまじまじと観察した。
丸みを帯びた耳に、他のイヌ科動物と共通するもふもふとした尻尾。
目の前の一ツ目がたぬきだと言えるパーツはその二点のみだった。