表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これが私の延命措置  作者: 回転金魚
私の逃走
6/20

6

「私は……」答えなんて決まっている。

嘉埜は、涙と一緒に泥を拭うと、一ツ目に向き直った。

「死にたくない。そのためには、何人でも殺してやる」


「そうかい、やっぱり君は……」


口にした言葉の罪深さに耐えられなくなったことを誤魔化すためか、あるいはその細い身体に溜め込んだ鬱憤の爆発か

嘉埜は辺り構わず、一ツ目のセリフをも遮って半ば半狂乱で叫びはじめる。


「だって……だってそうでしょ!?

あんな奴生きてても意味ないでしょ!!

最低だよ! 最低!!

だいたい意味わかんないよ!

さんざん私を蹴って、笑い者にして、いきなり死ねって!!

あいつらが退屈しなかったのは私のおかげなのに!!

あいつらがいじめられなかったのは、私がいじめられてたからで、本当は誰でもいいに決まってる!!」


「嘉埜、落ち着いて。

今ので彼が君の居場所を把握したんじゃないかな」


落ち着け? 落ち着けだって?

これから殺されるかもしれないのに?

殺すかもしれないのに?

他人事のポーズ決め込むのも大概にしろよ!

嘉埜は立ち上がった。

一ツ目への苛立ちと共に、不思議と抗う気力も湧いてきたのだった。



「なんか……刺せるような物貸してよ。

あのとき急にいなくなって、何か持ってきてるんでしょ?」


「察しがいいね」


一ツ目はカッターナイフを嘉埜へ手渡すと、近くの木の上へ退避した。



もう、腹は決まっている。

奴を殺すことへのためらいはゼロだ。


嘉埜は、五感を研ぎ澄ませて相手を待った。

僅かな動きも、物音も、香りも、逃せない。

逃せばそれが死に繋がる。


おそらく、一瞬の勝負になるだろう。

大狼の獲物は嘉埜のそれよりもリーチが長い。

待ち伏せからの奇襲、それが嘉埜にとっての最善策。




六月のじっとりとした気候の下、額を伝う汗の滴るに任せたまま、嘉埜は身じろぎもせずに相手を待っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ