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あの場を逃げ出してから約七分の間、酷使してきた脚が木の根に取られ、嘉埜は転倒した。
昨夜の雨でぬかるんでいた黒土に、顔から突っ込んだ。
死ぬかもしれないというのに、まったく無様な転び方だった。
苦い泥の味が口に広がる。
もう一度走り出すことも、泥を吐き出す気力すら起こらず、嘉埜は突っ伏したまま涙だけは堪えた。
今までいじめ抜かれた挙句、目論見通り殺されてしまうのかと思うと、悔しかった。
怖くて悲しくて寂しくて、様々な負の感情がごちゃ混ぜだが、どれか一つには定まらないこの状態が絶望なのかな。
嘉埜は大きな瞳に涙を湛えて、ギリリと奥歯を噛み締めた。