3/20
3
そのはずなのだが、理性的に考える心より、中途半端な生存本能が勝った。
これを良いことと見るか、所詮人間など動物の一種なのだと嘆くかの判断は考えるだけ無駄であるので嘉埜はその問題は放棄することにした。
それに、生存本能云々は抜きにしても、あんな奴に殺されるのは真っ平ゴメンだ。
そう、相手は"あんな奴"なのだ。
大狼 仁――
背が高く、少し冷たい感じのする切れ長の目を持つ優男。
イケメンだの王子だの、女子の間では人気があった。
邪魔だとか因縁をつけられて、何かにつけて大狼に蹴られた嘉埜からすると
人の腹を平気な顔で蹴り上げるような男が、何故人気なのか不可解極まりなかった。