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淋代嘉埜、十五歳、貧乏な母子家庭で父なし子で、おまけにいじめられっ子で、成績は悪いし、運動神経だって良くはない。
生憎、これといった趣味もないし、特技もない。
取り柄と言えば愛らしい容姿のみである。
現に五分と走らぬうちに息は上がり、足は縺れ、脳は酸欠に喘いでいた。
はっきり言って、死ぬにはうってつけの境遇だった。
別に生きていても良いことなどないし、生への執着も、また生きることの目的もない。
嘉埜の人生はこの時点で詰んでいるようなものなのだから、いつ死んだって構わないのだ。