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私は林の中で息を潜め、奴を待った。
待ち伏せからの奇襲。
それが私の取れる最善策。
でも一言で奇襲といっても、どこを刺せばいい?
どこに刺すのが一番効果的で安易であるのか。
第一に思い浮かぶのはやはり、目である。
人間は何かを認識する際に、その八割を視力からの情報で埋めている。
だから、目を潰してしまえば、相手はロクにこちらの位置すら掴めなくなる。
だが、ここで問題となるのはおよそ三十センチにもなる身長差である。
手を伸ばせば届かないことはないが、そんな不安定な状態では力が入らず、奥まで押し込むことは不可能だろう。
同様の理由で、首も却下だ。
と、なると、腹しかないか。
足も腕もダメということはないが、どちらも中心に芯のように固い骨が通っている。
それに重要器官がない。
刺したところで大した影響は与えられないだろう。
その点、腹はいい。
まず、足や腕ほど動かないし、骨も背骨のみだ。
しかも、腸などの内臓が詰まっている。
致命傷は与えられないだろうが、内臓を傷つけられるショックは相当のものだろう。
よし、腹を刺そう。
私は構えを解かずに決断した。