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できれば手放したくなかったそれなりに重い通学鞄が奴の顔面へヒットするかしないか、確認せずに一階へ続く階段へ向けて駆け出す。
どうも鞄はヒットしたらしく、大狼の口上は変に途切れた。
あの鞄、なくしたら二個目は買えないな、少し残念に思う。
一階の空いてる窓から外へ出ると、夕陽はまだギラギラとこの地を照らし続け、景色を橙色に染め上げていた。
校舎の裏側はちょっとした林になっていて、身を隠すにはちょうどいい。
とにかく走ろう。走れるところまで。
私は夕陽が強く地上の一切合切を照らし出すこの時間でもお構い無しに暗く、湿った土の臭いが充満する林の中へと走り出した。