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「だからまあ、手始めにお前を殺してみようと思って。
試し斬り的な? 犬にでも噛まれたと思って諦めてくれ。
お前ならいいよな。生きてて意味があるようにも思えないし――」
ペラペラと話し続ける言い様はムカつくが、この際どうでもよかった。
とにかく、とにかく逃げ道を見つけないと、殺される。
何かないかと周囲へ視線を巡らせた。
扉、窓、廊下……ダメだ武器になるような物が何もない!!
それこそその辺に落ちてる画鋲くらいしかない!
と、そこまで思ってハッとした。
そうだ、私、たぬきみたいな物を掴んでいたじゃないか。
私はたぬきのしっぽを握っていた手を……手を……
恐る恐る見やった左手には、あの一ツ目の影も形もなかった。
クソたぬき!!
思わずそう叫びそうになるのを堪える。
何が君の監視をしにきた、だ。
いの一番に逃げてんじゃねーか!!
まずいことに、大狼の口上はまとめに入っていた。
私は諦めて、使いたくなかった"奥の手"を、その得意げな顔面へ投げつけた。