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来るべき世界  作者: うらじろ
第一部 老人異世界へ行く
9/29

9.探索2

「いたいよ!」


「「うわーしゃべった!」」


 それは見た目ヌルっとしてそうで、実は体表がテカっているだけの、10cmほどのカエルに羽が生えたような生き物だった。ただ頭はカエルなんだけど、身体はヒトっぽい。目玉オヤジにカエルの頭を被せたような感じである。そいつは小さな指で、猫ちゃんの持つ包丁の先をつんつんと押し返している。


「この尖った金属がわたしのカラダを、傷つけたらどうしてくれるのサ」


 俺たちは、そいつの抗議をスルーして、顔を見合わせひそひそと話し出した。


「なぁカエルだろ?」


「うん。カエルだね」


「なんで喋ってるんだ?」


「うーん、たぶん妖精だから?」


「えっ!妖精ってなんでもありなのか?」


「うんー万物に宿っているらしいからね」


「さすが異世界だな」


「おいっ!君たち。危ないだ「なんだよ、切れない包丁なんだから気にすんな」ろ・・」


「むむっ、まぁいい。それよりもだ、あのトカゲの屍骸なんだが、先ほどの君たちの話だと、捨て置くということらしいが、まちがいないのかね?」


「なんか偉そうなやつだな。あぁそうだな、俺たちはもう持てないからいらないな」


「では、我らが処理してかまわんかね?あーもちろんタダというのも、こちらの気が引ける。何か礼をしたいのだが、希望はあるかね」


「へ?どゆこと??」


「おっちゃん、くれるって言ってるから、もらっておけば?」


 猫ちゃんは、俺の耳に口を寄せてそういった。死体と引き換えって・・・どうせ碌なもんじゃないだろう。しかし死体を引き取ってどうするつもりなんだろう?


「あーそれなら、なんでもいいよ。くれるものは貰っておくよ」


 俺は首を傾げながら、そう答えた。


「取引は成立だな。どうやら納得できていないようなので、少し説明しておこう、我ら妖精は、ジャングルに於いて死を迎えた、獣並びに魔物が腐って、有害な毒気を発することが無いように、常に浄化しているのだが、それと共に色々とそこから養分を頂いているのだ」


 なるほどね。精霊と同じ役割をしているんだな。


「ところが近年、天変地異のせいで、魔物の生態に異常がみられて、この地に魔物が少なくなっておるのだ。我らとしては、養分が取れなくなると死活問題なのでな、機会があればこうして出張って来ておる、というわけなのだよ」


 そう言いながら、小さく畳まれた布をこちらに渡してきた。これがお礼の品ってやつらしい。広げてみると、背負っているリュックの半分弱ほどの巾着袋だった。碌なものじゃないとは思っていたが、ただの袋でがっかりだった。


 要するに、妖精の食料になる死体が少なくなったので、誰かが殺したものでも貰える物は貰おうということのようだ。天変地異というのは、現代と繋がってしまった穴のことなんじゃないだろうか。魔物にしてみれば、こんなジャングルで同士討ちしているより、穴の向こうへ行けば人間食い放題なんだろう・・・って、そんな危険な状況になってたんかい?うーん、ニュースになってなかったよな・・・そこまで偏向してたのか?テレビ。いやーそんなの発表したらパニックになるか・・・。まぁほとんどの人がテレビなんか観てないだろうけどな。俺たちは妖精に別れを告げて、まだ夜の中を移動し始めた。猫ちゃんがそわそわしているのが、気になっていたが、妖精から離れると嬉しそうに話して来た。


「おっちゃん!やったね」


「なにが?」


 猫ちゃんは、それそれと巾着を指差していた。


「この袋か?なんか特別な素材なのか?」


「ううん、たぶんね、いっぱい入る袋よ」


「えっ!アレか?ゲームに出てくるインベントリって奴なのか?」


「ゲームは知らないけど・・・」


 なんか一番うそっぽいアイテムが出てきたな。げふんげふん・・・いや、ファンタジーぽいアイテムだな。どうも年を取ると、なんでもかんでも疑ってかかるようになるのも、いかがなものか。若い頃には、そういった類の小説やらマンガやらで育ったにも関わらず、そんな夢みたいな空想は、現実から遠ざかって久しかった。見た目は麻で編んだ頭陀袋である。ちょっとゴワゴワしている。これがアノ空間収納ってやつなのか・・・恐々と袋に手を突っ込んでみたが、特に特別な感触はしない。ただ内側は二重構造になっていて、なにかの皮が張られている。


「うーむ普通の袋だな」


「生体はダメなんじゃなかったっけ」


「あ、そうかもな。うんうん確かそうだった」


 俺はリュックに入っている食料や骨を頭陀袋に移してみた。


「なるほど、確かにいくらでも入りそうな感じがするな」


 まぁ引き換えたのがワニ2匹だから、無限収納とはいかないだろうが、重さも感じられなくなったし便利なのはまちがいない。袋の口を絞って腰に縛り付けて、再び歩き出した。


 夜が明ける頃、ジャングルの木々も疎らになってきて、歩きやすくなってきた。それでもまだ周囲は緑に包まれている。ワニのせいで、休憩が疎かになっていたので、少し拓けたところで朝ごはんにした。言わずと知れた燻製肉だ。


 猫ちゃんは逃げ出す過程で、こんなジャングルは通っていなかったと言うので、ルートがかなり違っているんだろう。兎に角話の通じる人間なり亜人に出会わないと、位置も特定できない。ある程度の位置がわかれば、猫ちゃんのテリトリーだった場所の、方角くらいはなんとか分るかも知れない。遠くに捨ててきた子犬が、翌日にはちゃんと帰ってきたなんて話は、いくらでも聞いたことがある。現代では、鎖に繋がれちゃって、そういうことはもう有り得なくなっているけどね。猫はまだ自由があるから幸せなのかもしれない。犬と猫じゃ違うのかもしれないけど、帰巣本能みたいなのはあるに違いない。


 比較的安全そうな場所を見つけては野宿を繰り返して、五日目には平原に出た。その間に、猿みたいなのと、目つきの悪い犬の顔の魔物に襲われたが、難なく撃退している。肉と毛皮をゲットした。何れも水場の近くだったので、水場は特に注意が必要だろう。




あけおめでございます。

短編だったはずが、だらだらと話が膨らんでしまってます。

筆が遅いのが原因で、ストーリーを考えているうちに、いろいろと付け足してしまう病気のようです。

ほんとにごめんなさい。

でもって筆の遅さは不治の病のようです。

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