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来るべき世界  作者: うらじろ
第一部 老人異世界へ行く
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3.日常の亜人3

 裏の家に倒れていた猫耳娘は、食べ物をやったら元気になった。


 今は亡き嫁さんが残した服が残っていたので、それを着せたら思いのほか喜んでくれた。


 話を聞いてやると、仲間内のいざこざで攫われて閉じ込められていたが、逃げ出してあそこで力尽きたんだそうだ。


 で、ここから出ても行くところはないので、匿ってくれと・・・いやまずいだろそれは。


 食い扶持が増えるのはまずい・・・。世間体もある・・・。いや引き篭もってる時点で無いか・・・あはは・・・。


 てか、世間体なんて今時ないよな。周辺の住民がもういないんだからな。


 食べ物も野草があるし・・・。




 朝起きると、当然のように隣で寝ている猫娘がいる。実にかわいい。


 人間の若い娘なら寄り付きもしないのに、亜人はそういう感情はないんだろうか。


 年甲斐も無く身体が反応してしまうが、さすがに手は出さない。


 寝顔を真近で見ると、そのあどけなさに良心が咎めるのだ。


 耳の位置が少し違うだけなのと、体毛が濃い程度で人間とそれほど違わない。


 良く観るとほっぺたに長い髭があったりする。


 抱きしめるくらいはいいのではなかろうか・・・


「にゃ・・・くぅ~」


 吐息を漏らして目を開ける。俺の顔を見てまた目を瞑る。嫌がってないという意思表示なんだろう。


 朝食を簡単に済ませると、何もすることがないので、ぼーっとしているだけになる。


 ボケそうだ・・・。


 猫ちゃんも、日向で丸まって寝ている。あいつもボケるの早そうだな。


 いざこざで逃げてきたわりには、危機感がないというか、気を抜きすぎではないか。




 のんびりと平坦な日が、一月ほど続いた。


 猫ちゃんとの関係は、少しずつ深くなっていた・・・すまん。(誰に謝ってるんだろう)つか、こんな老人でもいいのだろうか・・・。


 その間にいろいろと事件はあったようで、街の中心部に大きな穴が開いたとか、大きな獣に襲われたらしいとか・・・まぁ俺には関係のないことだ。


 たまには肉でも食うかと、いつものスーパーへ足を運んだ。


 猫ちゃんには少しだけ変装させて連れて行った。帽子とマスクは必須である。


 相変わらず通りに人影は少ない。前より少ないように感じた。


 スーパーの駐車スペースには、ほとんど車は止まっていないが、いくつか盛り塩がしてある。


 なんのおまじないだろう?近寄ってみると、でかい。30cmくらいの高さがある。そんなのが10箇所はあるだろうか。本当に塩なのかどうか確認はしなかった・・・。


 なんでも燃料が少ないんだとか・・・最近は家で電気も使ってなかったからわからなかった。停電なんて日常茶飯事らしい。俺なんかライフライン全て止まってるからな。よく生きてるもんだ。


 まぁそれでも、こうやって営業してるスーパーは偉いなぁ。


 値段も高くなってるけど、品揃えもスカスカになってきてるのがよくわかる。


 何の肉か表示されてないけど、他の肉より安かったのでそれを300gもらった。


 レジは一個しか空いてなくて長い列になっていた。


 猫ちゃんはテレビに釘付けだ。


 暴動の様子が映されている。この国はずいぶん平和だったはずで、こんな暴動なんて記憶にない。本当にこの国の出来事なんだろうか・・・。


 以前からマスコミは、本当のことを隠すようになって、それがバレて新聞なんか衰退してしまったが、辛うじてテレビのニュースはまだ生きているらしい。というかさすがに民放なんてやってないだろうけど・・・。そういえばあの時に、少しだけ暴動みたいなことはあったような気がするな。


 放送局に雪崩れ込んで、怪我人が出たとかなんとか。なんか少しだけ記憶が鮮明に蘇ってきたようだ。


 まぁあれだよ、嘘ばっかり放送してりゃそんなこともあるかもしれない。


 画面が切り替わって次のニュースらしい。


 おぉこれこの街じゃないか。レポーターが声高に叫ぶように説明をしているが、いまいち理解しずらい。なんか質も落ちてるんだな。


 例の穴が開いたってやつらしい。


 道路が陥没して大きな穴がポッカリと開いているのが見て取れた。穴の前にはトラ柵とロープで封鎖してあり、自衛官らしき人が野次馬を整理している。警察じゃないんだな。


それは偶然だったのだろう、画面に信じられないものが映りこんでいた。


 暗い穴の奥から何かが伸びてきて、自衛官のひとりを絡め取ると、そのまま音も無く穴に引き摺りこんだのだ。一瞬画面が揺れたが、なにかの見間違いだと思ったらしく、そのまま撮影は続いていた。


 レポーターはカメラの方を向いていて、気づいていないが、野次馬の声が聞こえていた。


「おい!今のなんだよ」


 その声に、やっと自衛官のひとりが居なくなっていることに気づいたのか、俄かに騒然としだした。


 テレビを見ていた猫ちゃんは、「あーあいつらだ」と呟いた。


 俺は金を払って、猫ちゃんを引っ張って急いで店を出た。




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