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来るべき世界  作者: うらじろ
第一部 老人異世界へ行く
27/29

27.接続領域環境アセスメント

 人外についての報告書からの抜粋:日本国に於いてのネコ目(ネコ亜目、イヌ亜目)以外のヒト亜族により近い、所謂亜人(獣人)についての報告にあるように、勤勉かつ有能なるものが多々見うけられる・・中略・・・将来的には保護活用の必要性を認め・・・後略。



 接続領域についての報告書からの抜粋:日本国以外の接続領域の有無について報告は無し。日本国に於いては、危険領域として立ち入り禁止の勧告を出している。いずれ政府として現地視察を行いたいと発表された。



 西都国際大学生物学研究所の発表からの抜粋:昨年捕獲された新種と思われる生物は環境の変化に耐えられず、死亡したが死後生物の皮膚が金属化していることが分った。



 東日本理化大学鉱物研究グループの報告(抜粋):接続領域から持ち込まれた生物の一部にレアメタルと同等の新しい金属を発見。



 国会答弁抜粋:彼の地には国があるということなので、そのように国として接していくということであります。



 国会答弁質問抜粋:国と申しましても、発展途上以前の国体だと聞き及んでおりまして・・・。



 国会外務大臣の答弁抜粋:その国はどうだとかという、相手によって態度を変えることはしないということであります。彼の地に於きましても、近接の一国との交渉を開始したばかりですので、早急に回答が得られると考えてはおりません。我が国としましては、人道的立場において可能な限りの交渉を続けていく所存であります。




 俺たちが異世界に行っているあいだに、このような経緯があったなんてことは、一切知らない。テレビも新聞もないのだ。知りようがない。俺と猫ちゃんとサビアは、俺の住んでいたあばら家で寛いでいる。そう無事に帰還を果たしたのだ。まぁ残念ながら全員無事というわけにはいかなかったのだが・・・。自衛隊員が3人犠牲になってしまった。即死だったので助けようがなかった。


 裏の家の床下ではなく、違う穴を偶然見つけてそこから日本国に帰ってこれた。穴はやっぱり狭かったので、教えなければ誰にもわからないだろう。当然例の魔物の墓場みたいなところは見られずに済んだ。あそこは知られない方がいいだろう。ひょっとしたら光が見えてしまう人がいたかもしれない。それによって俺みたいに特殊な覚醒をしてしまう可能性もある。俺だけつえぇぇぇ状態のほうが望ましい。覚醒した奴が敵対するかもしれないんだ、そんなの怖いじゃないか。秘密だぜ。特に自衛官に見られてバレたら上に筒抜けだよな。猫ちゃんに言わせれば、おっちゃんが光ってるのを誰も気づいてないんだから、大丈夫よって甘いことを言っていた。いやいやいや、あの場所を知らないからそうなのかもしれないんだぞ。だって猫ちゃんには光が見えてるだろ。


 穴は秘密にできたが、この家はみんなにバレた。なのであの老人たちが偶にやってくる。田畑は失ってしまったが、家族の住んでいる自宅は無事だったらしい。完全に資産を失ったのは、倉庫の近くに住んでいた5人だ。母親54歳と住んでいた30代の引き篭もり男性と、中年夫婦二人で住んでいたところへ同居していた中年男性。それぞれの関係はよくわからないし、聞きたくもない。自治体がなんとか面倒をみてくれるらしい。倉庫会社のおじさん二人とおばさんは、職場復帰するらしい。他の倉庫へ移動という形だ。自衛官は言うまでも無く、原隊復帰だ。いろいろと手続きは面倒臭そうだ。老人4人とトラック運転手は、異世界に戻るつもりらしい。今度は何時あちらに行くんだとかうるさい。まぁサビアをこのままには出来ないので、いずれ行くことになるんだけどね。だけど自衛官死んでるんだぜ、おまえらそれでも行くんか。


 数日して、例の金貨を換金できないかうろうろしてみた。どこもしょぼくれていた。思っていた金額の半分にしかならなかった。胡散臭さ満載の出所不明の金貨なんか、買い叩かれて当然だったのかもしれない。溶かして売った方がマシだったかもしれない。ところがある日、ひょろりとした学者風の男が訪ねてきた。


「田中次郎さんのお宅でよろしいでしょうか?」


 偶々猫ちゃんが応対に出た。サビアだと言葉が通じないから、まぁ良かったんだが、相手は亜人だったのでかなり吃驚したようだ。


「少しお待ちください。今呼んで来ます」


 というほど、玄関が離れているわけではないので、全部聞こえていたので、そそくさと出迎えた。じいさんたち以外に尋ねてくる人も珍しい。建て付けの悪い玄関扉も、じいさんたちが直してくれて、カラカラと小気味良い音で開くようになったのだ。


「田中ですが、どのような御用でしょうか」


「はい。私東山理化学大学研究所の遠山と申します」


 そういって名刺を渡してきた。確かに名刺には遠山近雄と書かれている。遠いのに近い男だな。


「前野様からお聞きしまして、伺わせていただきました」


「まえの?だれだ??」


「おっちゃん、前野陸曹のことじゃないの?」


 何時の間にか直ぐ後ろに猫ちゃんが居た。ちゃっかりサビアまで横に座っている。どうやら此方の物や人に興味深深らしい。車はすでに見て知っていたが、高速で走る車には吃驚していた。『メタルオーガ!』と叫んでいた。四駆とはまた違う乗用車みたいな形してんのかね?


「失礼しました。自衛官の前野様です」


「ほぉ、で、前野さんから何を聞いてきたんでしょうか」


「実は私共、防衛省と共同で研究開発などの協力しておりまして・・・・


   どうやら、前野さんが持っていた魔物の魔核を調べていたら、なんとレアメタルを見つけてしまったということで、一個じゃなんともならないので、手に入らないかと相談していたら、俺のことをポロリと喋ってしまったらしい。んでもって、サンプルを提供してくれれば、それ相応の金額で買い取ってくれるらしい。魔核一個から5gほど採れるらしい。で、グラム1200円くらいなんだとか・・・いやいやキタコレ儲け話やん。採れるレアメタルによっては、もっと高いものもあるらしい。異世界の商人に売らなくて良かった。ラッキー。ちなみに最近ではレアとは言えない位に、鉱脈も発見されたり代替もあったりで、価値も低くなっているが、魔核から取り出せればコストが段違いらしい。それと未知の金属が採れてしまうおまけつきとなれば、早い者勝ちで研究するところも増えてくる。


「なるほどぉ。どのくらい必要なんです?」


「あればあるだけほしいのですが・・・とりあえず調べてみないと含有量とかわかりませんので」


「そうですね。では、各色5個くらいずつ調べてもらいますかね」


「えっ色が付いてるのですか?わたしが見たのは黒っぽいものでしたが・・・」




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