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天才怪盗の社会奉仕  作者: ハルサメ
魅惑のサマーバケーション
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5話

「なるほど。じゃあ他の細かい点については俺の方で対応していけば良いのか?」


「臨機応変にね。あんたならそれくらいできるでしょ?」


 悔しいが、演じるという部分においてこの男は上だ。そもそもこの男はこのように前準備をする必要もなく、やってみろと言われれば即座に彼氏面をし始めるだろう。


 その一面において、流斗を尊敬している。非常に苛立たしいことではあるが。


「了解した。では特技程度の口裏は合わせるか。勉強が出来るということで英語が日常会話くらいなら可能としておこう」


「分かったわ。そういえばあんた他にも色々話せるらしいじゃない」


「五ヶ国語とかは余裕でいける」


「あたしは英語だけで一杯一杯よ」


 この男のスペックは普通では考えられない。本当に自分と同じ十六年間を過ごして来たのかと思うほど技量に長け、多くの物事に精通している。一体いつそれを習ったのかと聞けば「天才だから」の一言で片付ける。妙に納得できてしまう現実が憎たらしい。


「じゃあそれで行きましょう。多分私も色々聞かれるから、その都度対応していくわ。多少の無理難題なら何とかできるでしょ?」


「例えば?」


「ん? えーっと、そうね……色々な国の言葉知りすぎて、自分で言語を作ったとか?」


 突然振られた言葉に何も考えずに適当に返事をする。


「まぁ似た様なものはやった事はあるな」


「あるんかいッ!? てか何それ! どういう状況よ!」


「そう驚くことでもない。ただ仲間内で通じる暗号に過ぎない。まぁ最初から俺が作ったというわけではないが」


「そうだとしてもバイリンガル過ぎるでしょ!」


 くだらないことは偉そうに喋るくせに、こちらが感心することは寧ろ謙虚に淡々と話す。


 そういうところが憎たらしい反面、ただのお調子者ではない事を臭わせる。


 結崎流斗という人間は、まだまだ推し量る事はできない存在だった。


「それと忘れちゃいけないのが、絶対に喧嘩を売らないこと。というか武術とかまったくできません、って感じで過ごすこと」


「その理由は?」


「SAYURIさんの彼氏はボクシングの世界チャンピオンなの。もしあんたが喧嘩が強いって分かれば、勝負しようとするかもしれない」


「相手はプロなんだろ? 未成年の素人に手を出すのか?」


「それで何人がやられてることか……あっちもSAYURIさんと同じで父親が権力者なのよ。もみ消しなんて日常茶飯事。やられたら黙っているしかないのよ」


 あくまで噂でしか聞いたことは無いが、暴力・事故・薬物など相当な数の揉み消しを行っているらしい。そういう輩とはつるみたくは無いが、ここはもう大人の世界。好き嫌いが押し通せる場ではない。


 権力に楯突くことができるほど無謀でも、そして勇敢でもない。


「なるほど、殴り合いになったら面倒なのは理解した。可能な限り避けるようにする」


「いくらあんたでも勝ち目は無いから、痛い目に遭いたくなかったら大人しくしていること。他に多少の嫌がらせがあるだろうけど、あんただったら大丈夫でしょ」


 この男はつい先日、五千人を越える生徒全てから迫害を受けながら学園に通っていた。実際は学園の暗部をおびき出すための作戦だったのだが、そうとは知らされていない連中から本当の嫌がらせを受けていたらしい。それがある意味で良い演出になったのだが、それでも雑巾の搾りかすを頭から被せられるなんて話を聞いた時にはぞっとした。


 この精神力、これも一体どんな境遇で育まれたのか気になるところではあるが、程度が程度だけに聞くのも恐ろしかった。


「お前の彼氏はよほどの困難を乗り越える必要があるみたいだな。心底同情する」


「その彼氏に仮とは言え、あんたを選んであげたんだから喜びなさいよ」


「能力の高さも考え物だな」


「全く持って同感ね」


 わざわざ突っ込むほど学んでいないわけではなかった。


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