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天才怪盗の社会奉仕  作者: ハルサメ
ミネルヴァの梟、仕掛ける
77/131

77話

《まさかこんな爽快に締められるとは思わなかったぞ。絶対どっかで破綻すると思ってた。誰も怪しんでないんだもんな、あんな小芝居》


《それだけリアルに計画が行われてたって事だろ。まぁただ単にこいつらがアホだったってのもあるかもしれんがな。って、なんだなんだ? 反応が薄すぎるんだが、お前らまだ状況読み込めてないのか?》


 檜山と漫才のような振る舞いをしているが、それに対して生徒たちは未だに静まり返っている。どうやら相当驚いているようで、ざわめき声の一つも上がらない。


《驚きすぎて声も出ねぇか。だがこれが真実だ。仕方が無い、なら俺が音頭を取ってやろう。騒ぎたい奴や騙された奴はそれに乗っかれ。んじゃいくぞ》


 俺は両手を左右に広げる。


《せーのっせーで、ハイ》


 タイミングを合わせ、指揮者のように両手を振り下ろす。



「「「「「「「「「「「「「「「「知ってたッ!」」」」」」」」」」」」」」」」


 返って来た声に、危うくマイクを落としそうになった。


《ま、待て待て待て。ちょっと違うぞお前ら、そんな……打ち合わせしたかのような息の合った負け惜しみはいらんぞ。落ち着いて言葉を選ぶんだボケども。もう一度やろうか》


 仕切り直そうと俺が両手を上げた、その時、


「「「「「「「「「「「「「「「「ドッキリだって全部知ってたッ!」」」」」」」」」」」」」」」」


「…………」


 なんでそんな息ぴったりなんですかね?


「結崎、後ろ見てみ」


 にやけ顔の檜山に肩を叩かれ、振り返る。『祝     ドッキリ成功』の横断幕がそれはもう堂々と掲げられている。


 が、いくらなんでも祝とドッキリの間に、スペース空きすぎじゃないか? しかもそこに俺の知らない白い布みたいなものがかかってるんだが。


 嫌な予感が背筋を凍らせる。


《実はな》


 檜山の言葉と同時に、横断幕にかかっていた布が外された。


 現れた文字を加えて、横断幕を改めて読む。


『祝 ドッキリをドッキリ成功』


《騙されてたのは、やっぱりお前なんだよ!》


《なん……だと?》



「ざまぁみやがれ結崎!」

「てめぇの好き勝手にされるわけねぇだろ!」

「こっちは全部知ってるんだよ!」

「ねぇ結崎君! 今どんな気持ち!?」

「いいぞー結崎ー、今のお前すげぇ面白いぞー」



 すると今までの静けさが嘘のように、生徒たちから罵声と笑い声が生まれた。まるで、先ほどまでの俺と同じような豹変振りである。


「いやぁ悪いな結崎。お前の方のも面白かったんだが、こっちのがもっと面白そうだったんだわ」


 気の毒そうに、しかし口調に相応しく満面の笑みで檜山が肩を叩いてくる。


「え、ちょ、おまッ! これお前が全部仕組んだのか!?」


「いや、仕組んだ人間はそっちの隅っこで笑ってる」


 指された方を見れば、舞台袖で室長が腹を抱えて笑っていた。


「……つまり、俺の知らないところで、本当に俺を陥れようとしたって事か?」


「結崎に一杯食わしてみないか? って言われて、試しにいろんな奴らに聞いてみたら、皆すっげぇ乗り気でよ。あ、苦情は全部あいつによろしく。主犯はあいつなんで」


「ここにはクソ悪趣味な奴らしかいねぇのか」


 騙していたと思ったら、既に味方にも裏切られていた。訂正しよう、どうやら俺の味方はどこにもいなかったようだ。


「さて、んじゃ騙された愚か者から締めの挨拶をよろしく」


 前に出ろ、とジェスチャーされて、俺は肩を竦めて一歩を踏み出す。


《あぁもう分かった。そんなに勝ち誇りたければお前らの中で勝手に勝ち誇れば良い。もう俺は気にしない。俺はそんな細かい事に腹を立てるほど器が小さくは――》


「負け惜しみはいらねぇぞボケ野郎」


《今の奴、後で雑巾絞った汚水ぶっ掛けてやるから覚えとけ。とまぁ、栄凌学園にはイジメも何もなく、平和な時が続いていたということで、そろそろお開きにしておこうか》


 そこで、五千人を超す大勢の生徒が、まるで一つの生き物のように一瞬で静まり返った。


《夏休みの一ヶ月、悔いの残らないように過ごせよ。じゃあ一同、礼!》


 生徒たちは俺の言葉に習い、行儀よく礼をする。


「解散ッ!」



こうして、波乱の終業式は幕を閉じた。

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