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71話

「課題が提出されていない」


 そんな用件で、俺は放課後に職員室で拘束されていた。そもそも提出しようとしたプリントが、御丁寧に引き裂かれていたのが原因である。


 しかしこの社会科教諭にそんなもの説明しても、どうせ無意味だ。今俺の身に起こっていることをこいつらが知らないわけが無い。それなのに相談に乗ることもなく、逆に難癖をつけてくるのだから、もう反論することすら面倒だ。


 記憶をたどり、十五分かけて『絶対君主制と立憲君主制の問題点』という八百字のレポートをその場でもう一度書き上げ、教諭の机に叩きつけてやっと帰宅することが出来た。


 刺すような数多の視線に晒されながら廊下を進み、昇降口にたどり着く。小窓を開けると、当然の如く俺の外履きはなくなっていた。西城と同じ扱いとかちょっと勘弁してください、という程度の感傷に浸り、いつも通りバッグからサンダルを取り出す。登校時はサンダルは許可されていないようで、毎度安物の靴を揃えるのが面倒になってくる。


「さてじゃあ帰ろうか」


 と、陽気に声を上げたのはもちろん俺ではない。


「またあんたか」


「当然だよ。私は君の監視なんだから」


 そう言って周防成美は俺の目の前でにこやかに笑った。


 成美さんが俺の監視になったのは、全校集会の翌日からだ。支倉は成美さんを監視に置き、俺に報復する準備をさせないようしているらしい。外部と連絡を取ろうにも、電話やメールも全部監視されているとのこと。なんとも用心深いことだ。


「苛められっ子の俺に、これ以上何を警戒しているんだか」


「私は言われた命令を遂行しているだけ。それ以外は知らない」


 監視を初めて以来、成美さんは自分がギルドの人間であることを隠そうとしなかった。そうすることで、逆に俺の行動を抑制しているのだろう。事あるごとに傍に寄られ、下校時は家に入るところまで監視されている。俺たちの会話は常に録音されていて、成美さんを言いくるめて寝返らせるのも叶わない状況だ。


 こうしてみると、待遇の酷さに思わず笑えてくる。


「命令だとしても、俺と帰るなんてのはご愁傷様だな」


「そうでもないよ。少なくとも君とは会話になるから」


「一体誰と比べてるんだか教えてもらいたいもんだな」


 問いかけではなく皮肉として言い、俺は校舎を出た。成美さんは俺の直ぐ横を歩く。傍から見たら恋人同士に見えるだろうが、その実体は昼ドラも真っ青のドロドロだった。

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