表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才怪盗の社会奉仕  作者: ハルサメ
ミネルヴァの梟、堕ちる
63/131

63話

「事態は思ったより深刻……だね」


 昼休み。俺は室長に呼び出され、分室に来ていた。室長以外の姿は無く、俺は自分の椅子を室長の執務机の前に持ってきた。


「分室への投稿は以前の五割増。全体の七割近くが君に関する質問だ。君が本当に噂通りの犯罪者なのか。君がここ最近で一気に有名になったこともあって、学園中がこの話題で持ちきりだよ」


 室長が手渡してきた紙には、依頼の分類が円グラフで書かれていた。その円グラフの殆どが、俺への質問と言う『その他』で制圧されている。


「犯罪者ってのは人気者らしいな」


「話題には事欠かないからね。朝、西城さんをあしらったそうじゃないか」


「あいつが余計な気を回すからだ。俺を心配するより、自分の面倒をどうにかしろって」


「確かに、今の君の立ち位置は本当に危うい。何せ、流れている噂は信じがたいことでも、全部本当のことなんだからね」


 今学園で広まっている噂、それは全部的を射ている。俺は人も殺したこともあるし、物を盗みもした。犯罪者に育てられもしたし、ヤバイ組織と関わってもいた。


「ここまで正確って事はギルドが関わっていると考えて良いのか? オリュンポスの下部組織なら、そこからいくらでも情報を流してもらえるだろ?」


「十中八九そうだろうね。そして状況的を考えると、火付け役は確実に君塚さんだ。以前遼一と話した時、あれは君の事を知らなかった」


「ギルドとあーやが手を組んで、ここまでの噂にしたってことか」


「それが確実だと思うよ」


「あれほど嫌ってたギルドと協力するって事は、心底俺を排除したいんだろうな」


 そのために、かつての宿敵と競合する。なんとも胸が熱くなる展開じゃないか。


 そこで、室長が新たな紙を差し出してきた。


「これは明日の朝開かれる、全校集会のスケジュールだ。その中で、僕が分室の一学期分の業績を報告するところがある。ギルドが何か仕掛けるとしたらここだろうね」


 全校生徒五千人が集まる大講堂。そこで学園中の噂の真相を追究しようとすれば、それは五千人を味方につけるということになる。五千人の集団、誰も相手にしたくはない。


「いよいよ後には引けない。君には出来る限りの情報を持って、慎重に対処して欲しい。まず知っておいてほしいこと、それは周防成美君。彼女はギルドと繋がっている。絶対に信用してはいけない」


 特に驚くことはなかった。分室に近しい人間にスパイがいることもそうだが、それが親しい間柄ではあった成美さんだとしても、俺の度肝を抜く事実にはならない。


「じゃあ周防兄もか?」


「そうだろうね。こっちがこの情報を知っていることを、ギルドは絶対に知らない。それは確実なアドバンテージだ」


「知っていて泳がせたって事か」


 鬼ごっこで必勝方があるとすれば、それは鬼の存在を常に把握しつつ姿を隠すことだ。スパイを全て排除するのではなく、目につく場所で監視をする。重要な情報を与えなければスパイの仕事はできない。


「そしてもう一つ、おそらく彼女が明日の全校集会での火付け役になるはずだ。その際、何があっても君は絶対に前に出てはいけない。出てしまったが最後、もう絶対に後戻りはできない」


「さしずめ、ギロチンにでも処されるってとこか」


「とにかく、ここを過ぎればすぐに夏休みに入る。そうすれば色々手を回す事が出来る。いいね、ここが正念場だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ