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天才怪盗の社会奉仕  作者: ハルサメ
ミネルヴァの梟、助ける
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57話

「あたし実は寂しがり屋で構ってちゃんだからさ、ここにいるのが凄く安心するのよ。べ、別にあんたがいるからとかじゃないからね! 勘違いしないでよね! ……そうか、西城。お前も大変なんだな。うんうん」


「結崎君、その一人芝居楽しいですか?」


「割と気に入ってるんだが。個人的に」


「あんたねぇ……」


 ソファーに座っていた西城が声を震わせながら立ち上がった。


「あたしの声で遊んでんじゃないわよッ! 誰が喋ってんのか分からな――」


 更に何か言おうとするが、そこでちょうど西城の携帯が鳴った。マネージャーが到着したようで、俺のほうをキッと睨むと、「覚えておきなさい!」と言い残して去って行った。


「いやぁ仲良いね。声真似は似すぎて気持ち悪い域だけど」


 苦笑いを浮かべる成美さんに対し、


「でもそんなところ尊敬するよ結崎君!」


「そして私の声も真似できるのね……」


「他人事のように言うからだぞ」


 他人の不幸は自分が無関係だからこそ、蜜のように甘い。


「おい嘘だろ成美! こんな奴のどこが尊敬できるってんだ!」


「それでまたこの馬鹿兄貴は簡単に釣られて……これはハズイね」


「あ? 一体どういうことだ?」


「ややこしくなるので直ちに仕事に戻りなさい周防君」


 きっぱりとしたあーやの迫力に気圧され、周防はおずおずと引き下がって行った。


「それにしても、これでギルドの件を二件も片付けちゃったね。これは凄いことだよ」


 水林の後ろ盾になっていたのはやはりギルドであった。盗聴器の手配や学校での西城の私物の盗難、発覚時に連れていた空手部員たちはそのギルドの協力らしい。財力がある家庭でありそれなりにお得意様だったようで、ギルドの協力を得て何かをするのは今回が初めてではないとのことだ。


 だがやはり契約が存在し、ギルドの情報を得ることはできなかった。深く関わりすぎたからこそギルドに多くの弱みを握られており、罪が発覚した後でも口を割ることはなかった。そこまでの拘束力、影響力。もはや所詮は学生の集団、と軽んじる事はできない。


 ギルドはこの学園におけるオリュンポスと言える領域まできている。


「ですが結崎君はこれからが注意すべき時です」


「どういうことだ?」


 あーやは不安そうな表情をする。


「去年、影宮室長も同様にギルドの問題を次々と解決していきました。するとギルドは目の敵である影宮室長を潰す報復行為を始めました」


 敵対する勢力を潰す。ギルドと違い、分室が活動内容と構成員を公表している現状、ギルドから分室への攻撃はその逆よりも遥かにやり易い。


「影宮室長に罪が被るように問題を起こしたり、また西城さんのように陰湿ないじめも始まりました。もっとも室長はその全てを解決しましたが」


 あの室長が苛められてるとか何それ恐い。何が恐いって、いじめを受けている時に不気味に笑ってそうで恐い。解決という名の報復を考えると、身の毛がよだつ。


「なるほど。それで今度はその対象が俺になると言うことか」


「おそらくは。結崎君ならば大丈夫でしょうが、用心に越した事はないかと」


「ご忠告痛み入るよ」


 心配そうなあーやに礼を述べるが、実は今の俺は高揚感を抱いている。ギルドが向こうから飛び込んでくるなら、それは嬉しい事だ。逆に歯ごたえの無い、退屈しのぎにもならないならある意味報復するつもりである。


 殺す気なら殺される覚悟を持て、とは常識であろう。有事の際には栄凌学園版オリュンポスに、そのモデルになった組織に所属していた人間として一つ教育するとしよう。

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