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天才怪盗の社会奉仕  作者: ハルサメ
ミネルヴァの梟、助ける
43/131

43話

「それで、今日はどのような用件でしょうか?」


 簡単な自己紹介の後、あーやは三人分の麦茶を入れ、仰々しい応接室のソファーに座った。あーやと俺が同じ側、対面に西城という形だ。


 あーやの雰囲気は既に引き締まったものに変わっていた。目標にしているということだけあり、どことなくあの母親の雰囲気に似ているのだが、まだ少し固さがある。


 こうなるともう冗談などは言えないので、俺は聞き役に回ることにする。


「あたしに協力して欲しいの。ここって生徒の依頼を聞いてくれるところでしょ?」


「学則などに違反しない限りで、最大限の助力はします。どういった協力でしょうか?」


「あたしの持ち物を盗んだ奴を突きとめて欲しいの」


 西城はやや強い口調で言う。


「それは昨日のお話にも関係することでしょうか?」


「え、えぇそうよ。それに関してはそいつなら大体の話は分かっているはずよ。まぁあたしの言葉を信じていないようだけど」


「別に信じてないとは言って無いだろ。一般的に信じられないと言っただけだ。俺個人としては、お前の言う事の方が信憑性が高いと思っていた」


 話し合いの場において、冷静すぎると言うのは逆に怪しいものがある。濡れ衣を着せられそうになれば、それを必死に否定しようとするのが普通であり、あの二人の対応は何か余裕を持ちすぎていた印象がある。


 先週朱乃に呼び出されてそ知らぬ顔をしていた俺と同じで、腹に一物を抱える態度だ。


「……なるほど。特定の人物から持ち物を無断で持ち出される、ですか」


 昨日聴取した話を聞かせると、あーやは確認するように呟いた。


「それをやったのが彼女たちだという根拠はありますか?」


「あいつら、入学した頃は私によってたかってきたのよ。面倒だったけど、あたしも立場があるから、当たり障りなく接してはいたんだけど、それがある日突然態度を変え始めたのよ。調子に乗ってるとか言われても、乗ってるのはそっちでしょって感じで、そんな陰口とかがエスカレートした結果が、今の状態よ」


 ありきたりすぎるほどに完全なイジメでした、はい。


「そうですね。もし彼女たちが盗難を行っているのだとすれば、それは学則に違反しているどころか、法律にも違反することです。分室が動くには十分すぎる案件です」


 盗む、という行為は世間的には完全な悪である。その認識に、思わず笑いそうになる。


「ではまず、盗まれた品物と時期についてまとめて行きましょう」


「分かったわ。あんた、麦茶おかわりお願いね」


「あぁ? 俺はてめぇの召使いか何かか? 麦茶が飲みてぇならてめぇで入れやがれ」


 でもあーやに睨まれたので、へこへこしながら麦茶を入れに行きました。


 事件、ということでまたあーやの雰囲気に真剣みが増す。真似事と言われればそうなのだろうが、やっている事は警察とそう変わりはしない。確かに問題ばかり起きるこの学園でこんな役割を担っていれば、あんな母親が生まれるのも分かる気がする。


 どれだけの場数を踏んでいるかというのは、他者からの評価に加え何より当人の自信にもつながる。何の実績も上げていない若造を相手にしてくれるプロなど、どこにもいない。


 逆に言うと、確かな実績と信頼される組織からの推薦があれば、それがド新人であろうとも仕事が多く舞い込み、信頼関係を築きやすくなる。そういう意味で、この分室は学生でありながら、捜査能力を養うには十分な組織なのかもしれない。あの母親が作ったのだ、意味が無いわけが無いだろう。

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