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天才怪盗の社会奉仕  作者: ハルサメ
ミネルヴァの梟、助ける
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37話

「と、そんなことより今日は本気で帰らせてくれ。冗談じゃなくマジで」


「確かに今日は天気が崩れるらしいですね。まぁ一段落したので良しとしましょう」


「さすがあーや! 話が分かる。それじゃあ俺はこれで」


「あぁ結崎ちょっとま、っておいぃぃッ! ちょっと待てよ! 本当に帰るのか? 帰っちゃうのか!?」


「…………」


「その本心を隠そうとせずにウザッて顔するの止めろ!」


「はぁ……なんか用か、周防?」


 颯爽と帰宅のポジションを取っていた俺を、周防が苛立たしくも呼び止めた。


「待てば良いんだよ待てば――ってだから帰ろうとするんじゃねえッ!」


「チッ」


「露骨に舌打ちするんじゃねえよ! 俺先輩だぞ! 年上だぞ!?」


「一つ教えてやる。年功序列を押し付けてくる輩に限って……無能だ」


「ふざけんじゃねえぇぇ!!」


 単刀直入に、成美さんの兄である周防雅紀は典型的なうざい男でした。


 室長を尊敬していると聞いていたから、室長と同じく掴みどころの無い飄々とした人物かと思えば、完全にその逆で暑っ苦しく騒がしい性格の持ち主でした。


「そんな周防は先週の勝負以来、何かと僕に突っかかって来ます。かなりうざいです。最近気温も上がってきたからより一層うざいです。マジで勝てんねぇんだからさっさと諦めやがれです、てか現実見ろよカス! って感じです。でもそう思いながらも、かわいそうな周防の話をちゃんと聞いてあげる僕マジやさしい、と心の中で密かに思いました」


「漏れてるけど!? 心の声すげぇ漏れてんだけどッ!? てか何故絵日記口調!?」


「心の声が聞こえるとか……勝手に異能ファンタジー要素入れんな。そんな設定ねぇから」


「設定もクソもたった今てめぇが口に出しただけだろうが!」


「あれか? シャーマン的な、何かか?」


「だからちげぇって言ってんだろうが! しつけぇよ!」


 まぁ本当にしつけぇのはお前なんだけどな。さて、飽きたな。というか帰らせろ。


「と、いうわけで。あーや、後よろしく」


「君は私を良い押し付け役か何かと思っていませんか?」


「そうじゃない! 俺はあーやを信頼しているんだよッ!」


「あぁはい、そうですね。すごい棒読みでありがとうございます。まぁだからというわけではありませんが、周防君。手が空いているならこの書類を種類別に分けてください。時間は三十分、はい始め」


「おまッ! これ何枚あんだよ!」


 周防が目の前に山積みにされた書類にリアクションを取っている間に、俺はそそくさと分室を抜け出した。周防をからかうのは楽しいが、上がってくるとウザイのが難点だ。


「あいつも馬鹿じゃないけど、バカなんだよなぁ」


 ある程度は頭が回るが、中途半端すぎて逆に痛い目をみるタイプだ。


「あんまり苛めないであげてよ?」


「そりゃできない相だ……そうやって気配消して近づくのは、やめてくれないか?」


 いつの間にか俺の後ろには、にんまりとした顔で室長が立っていた。てか俺に気配気づかせないとか、この人マジで何者?


「影宮識也、ただの学生だよ」


「一つ言わせてもらうぞ、あんた絶対学生じゃねえよ」


ただの学生がそんなあっさりと他人の心読んだら怖い。


「絶対ってあんまり好きな言葉じゃないんだよね。可能性は無限にあるんだから」


「その意見には大賛成だが……あぁもうめんどくせぇ、何か用か?」


 この人だったら異能設定あっても、逆に納得するだろう。

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