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天才怪盗の社会奉仕  作者: ハルサメ
ミネルヴァの梟、遊ぶ
30/131

30話

 人生の中で試される場面、というのは常に付き纏っている。いついかなる時でも周囲から価値をはかられ、それによって関係も大きく変わっていく。できる奴、できない奴。好ましい奴、好ましく無い奴。それらを見定められる場は、生きていれば必ず来る。


 学生なら学校のテストや、部活動の大会、またはスピーチコンテストや、生徒会選挙など、多くの試される場が存在しているらしい。それを競争として採用し切磋琢磨を促す。それが教育機関である学校の役割というところだろう。


 そして、今の俺もその試される場にいるのだろう。


 俺が座っている机の周りには、二十人弱の分室の人間が、品定めをするような視線を俺に向けていた。そして、俺の正面には分室の人間が一人座っている。


 周防雅紀。成美さんの双子の兄で、俺の所属を認めた三人目。双子とはいえ成美さんに似ているとは言えず、がっちりした体躯に少し髪が逆立っている、やんちゃな青年と言う風貌である。


 それが今、トランプをシャッフルしながらニヤニヤと笑みを零している。


「確かに認めるとは言ったが、ちょっとゲームしようぜ」と周防に言われたのは、放課後の会議で俺が分室の一員になったことが発表され、一言あいさつしようとした時だった。


 昨夜朱乃から何か仕掛けてくるかもしれないとは言われていたが、こうもいきなり来るとはある意味で好感が持てる。わだかまりは、早く済ませるに越したことはない。


 あーやが周防を止めようとしたが、当人である俺が承諾したことにより、急遽俺と周防の勝負が行われることになった。負けた方が特別何かをするという決まりはない。だが、負けた方が人としての恥を背負う事は確かだろう。


 周防が提案した勝負の内容はブラックジャック。周防が親での三本先取である。非常に分かりやすい勝負方法、そしてある程度の公平性が感じられる内容だった。


 数多くのトランプゲームの中で、ブラックジャックは親が絶対的に有利とは言い難い。21になるまでカードを引き続ける、というのがブラックジャックの簡単なルールだが、親にはこの他にも17以上になるまで引き続けなければならない、そして17を越えた場合、それ以上カードを引くことが出来ない、というルールも存在している。


 また親がバースト、つまり22以上になってしまったらプレイヤーもバーストしていない限り、プレイヤーの勝ちになる。プレイヤーは勝つには自分で21に近づけることの他に、親が勝手にバーストしてくれるのを期待するという手段が存在する。


 親にはカードを引くかどうかの選択権が与えられていない。それがブラックジャックというゲームのバランスを保っている。


 「それじゃカードを配ろうか」


 シャッフルを終えた周防は山札を左手に持ち、不敵に微笑む。


「切ってもらって悪いが、カードを切り直しても良いか?」


「何もしないって、用心深いな。まぁいいだろう」


 俺は手渡されたカードを切るよりも先に、表にして全てのカードの種類を確認した。さっと通し見た後、俺はそれを手早くシャッフルして周防に返した。


「聞いたぜ、ギルドの問題を解決したそうじゃないか。どうだ、その目ざとさでカードに何か不具合でも見つけたか?」


「いや特出して言うようなものは何も。始めてくれ」


「良いだろう」


 周防は慣れた手付きで俺の前に二枚、自身の前にも二枚のカードを置く。


「それじゃあゲームスタートだ」

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