19話
俺は分室を出た足で再び部室棟へと向かった。チラホラと部活を終えた生徒とすれ違いながら、階段を上り女バスの部室の前に着く。二回のノックのあとに、扉を開いた。
その先、室内にいたのは白鳥部長だった。
「やっと来たのね」
白鳥部長は不満そうな顔をしてベンチに座り、俺に向かって紙クズを投げてきた。
「申し訳ない、分室の方で遅れたんだ」
「呼び出しておいて、女の子を待たせるなんていい度胸ね」
苦笑いを浮かべ、俺は投げられた紙クズを拾う。『六時に部室で』と書かれた紙は完全にクシャクシャになっている。俺が鍵を返す時に部長の制服に忍ばせたものだ。
「それで何? もしかして私に一目ぼれしちゃったとか?」
白鳥部長はその大きめな胸を強調するように妖艶に腕を組む。元々むっちりした体型だからか、いくらか様になっているのが笑えない。
なるほど。その台詞、聞く立場になると本当に面倒臭いな。
「確かにその大きな胸に飛び込んでいろいろやりたいのは山々だが、今はそれどころじゃないんだ。本当に残念だが。話が終わった後でも良いなら相手になろう」
「本当に残念そうだね君は。それじゃあ楽しみにしてるよ。それで、話って何かな? 胸のサイズなら」
「90のF」
「……ちょっと、何で知ってるのかな?」
「稀代のおっぱいソムリエの俺にかかれば、それぐらい見ただけで分かるぞ」
「いやいやそんなもの知らんよ」
その苦笑いは本気で引いているのかどうなのか。だが事実なのだから仕方が無い。これも幼い頃から親父に仕込まれ……この話は止めておこう。親父の話など反吐が出る。
「まぁともかくだ。さっき分室で今回の件は状況不明により、処分保留と言うことになった。あんたの思惑通りにな」
「……どういう意味かな、それは?」
「言葉の通りだ。今回の件はあんたが仕組んだことだろ?」
すると白鳥部長は突然噴出すように笑い出した。
「君面白い事言うね! このわけ分かんないことを私がやった? 何で私がそんなことやらなくちゃいけないの? ただでさえ学校側から目をつけられてるのに、わざわざ問題なんて起こすメリットは――」
「今回の件はメリットを求めてのものではなく、デメリットを消すためのものだろ」
そこで一瞬白鳥部長は眉を潜めた。だが直ぐに元の笑みを浮かべ直す。
「じゃあ聞こうじゃない。私がやったって言う証拠を」
足を組み、白鳥部長は俺を値踏みするように見る。
「あぁ。あんたに真実を教えてやるよ」
全ての事を終えた時、そして梟は飛び立つ。