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天才怪盗の社会奉仕  作者: ハルサメ
ミネルヴァの梟、探る
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14話

 何かが起こった。俺は隣にいるあーやに目を向ける。するとあーやもそう考えたのか、俺と顔を見合わせ女バスの人だかりへと足を運ぶ。


「何が起こったのですか?」


 こんな時ですらあーやの声音は淡々とした冷静なものだった。


「これ見て!」


 そう言って差し出した白鳥部長の右手に握られていたのは一本の鍵であった。ディンプルタイプであり、鍵の表面に大小さまざまな丸いくぼみが存在している。それ以外で特出する点は、熊のストラップがついていることぐらいだ。


「これ、女バスの鍵じゃない! シャワー室の鍵よ!」


 驚きの訴えに、俺とあーやは再び顔を見合わせる。


「たしかに先ほど成美さんからシャワー室の鍵も紛失した、と連絡を受けましたが……」


「つまりその鍵が女バスのロッカーに入ってたって事か? んで女バスの鍵は?」


「ロッカーの中にはこれしか入ってなかったよ。女バスの鍵はどこにもないのよ」


 白鳥部長の言葉に、隣に立っていた部員は首肯を返す。


「高坂の仕業ってわけじゃ……ないよな」


 視線を向けられた高坂はかなり精神的にやられているようで、ヒッ……という悲鳴に似た声を上げる。高坂の嫌疑はあくまで暗証番号の不注意だ。シャワー室の鍵が部室の鍵と交換され、更に開錠の番号まで変わり、そして部室の鍵が無くなるなど明らかに別の人為的な力が働いている。


 事故ではなく、事件。その可能性を考える必要がありそうだ。


「こいつはスクープだね」


 隣に立っていた成美さんが目を輝かせていた。根っからの報道人のようだ。


「てことは、暗証番号に関しては高坂は関係ないって事かな?」


「まぁそうなんじゃないのか? どうなんだ高坂?」


 同意を求められ、当人である高坂に話題を振る。


「ち、ち、違います! 私、そんなのやってないです!」


 小動物の反抗とでもいようか、高坂は小さな体を震わせて訴える。


「うん、じゃあごめんね高坂。疑ったりして。はい皆、前科があるとはいえやって無い人を疑ったんだから謝罪だ謝罪!」


 後腐れなく謝罪の言葉を述べた白鳥部長は何か清清しいものがあった。白鳥部長の率先した行動に、戸惑っていた他の部員たちは習って高坂に謝罪をする。当然の如く高坂はオロオロと所在なさげな態度を示していた。


「にしてもこんなこと誰がやったんだか」


「白鳥部長、犯人探しよりも先に部室の鍵を探した方が良いと思いますが?」


「あぁ、そうね。確かにそれが先ね」


「そうすると、怪しいのはやっぱりシャワー室か?」


 ロッカーの中に入っていたのはシャワー室の鍵だった。ならばそれを手がかりとして追うのが一番だろう。


「えぇそのようで……」


「ん? どうした?」


 言葉の途中であーやは俺の顔を見て硬直した。というよりじっと俺の顔を見ていた。


「俺に惚れたか?」


「何故今笑っていたのかと思いまして」


「笑ってた? 俺が?」


 手を口にもっていくが表情に変化はない。それどころか、笑みを併発する感情を抱いた覚えは無い。ていうか俺の渾身のギャグは表情一つ変えずにスルーですか、そうですか。

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