第6話
「その前に1つ聞きたい」
求められている仕事は理解した。その上で確認すべきことがある。
「すでに当人たちに連絡を入れているのなら、直接確認しない理由はなんだ? 2人まとめて呼び出してすり合わせれば早い話だろ」
「確かにそれが1番早いんだけど、どちらかの嘘をその場で暴く形になってしまう。それは僕たちとしても心苦しいんだ。できるなら、確証をもって連絡をしたい」
緑髪のカコ(ちゃんと3つの頭の意味である)が、困った様に言う。
「グリム童話のシンデレラでは嘘をついて靴を履いた姉たちは、その傲慢な態度仇となり、結果としてシンデレラの結婚式で目玉を抉られるんだ。変に刺激すれば、向こうも引っ込みが効かなくなる」
「え、なんですかそれ怖い」
栗栖部長の言葉に成美さんは自分の目を隠す。
「ガラスの靴の形に合わせるために、指や踵を切り落とすんだ。まぁ今回の嘘つきにその覚悟があるかは知らないけどな」
義母の命令と描かれる時はあるが、その末路は悲惨だ。
嘘を突き通せる自信があるのか。それとも頭の足らない阿呆か。どちらにせよ、依頼主が望んでいない以上、その手段は取れない。
例え嘘つきであったとしてもファンを傷つけたくない。それがアイドルとして正しいのかは分からない。
ただ、俺がやるべきことに変わりはない。それに、すでに話の中に怪しい部分が存在している。
「いいだろう。そのシンデレラ探し、引き受けよう」
ガラスの靴という完璧な証拠を持って探し回るのではなく、シンデレラの行動と状況から正体を暴くしかない。
「当時の映像が残っているというが、服装などから判断はできないのか?」
「ライブ中の映像から、服装はわかってるんだな。他のファンと同じで、彼女らはゲンのファンらしくメインカラーのTシャツを着ていた」
「でも僕を助けてくれた時は、そんなカラフルな服装じゃなかったんだ。多分白。僕らのメインカラーは目立つから、そこは確かなはず」
ゲンのカラーならば紫色になる。流石にその服を着ていたなら目立つはずだ。自分のメインカラーなら尚更だろう。
パフォーマンスや差別化のためのカラーバリエーションとして髪の色を変えてたのか。
「ライブ終了から、その救出案件が起きるまでの時間は?」
「正確に測ったわけじゃないけど、ざっと5分かな。舞台袖にはけたあと、ちょっとくらっと来てね。一旦はイスに座ったけど、そのあとトイレに向かったんだ」
「そしてその5分でAIRIは着替えを完了していた。ならライブ終わりの映像で、速攻で会場を出る姿が映ってるはずだ」
「残念ながら撮影はライブ同時に終わっているからそこまで映っていないんだ」
「会場に運営スタッフが客の出入りを確認していたりは?」
「会場は学校の野外ホール。入場時は確認しても、退場は自由だから特にチェックもないみたいだ」
とりあえず思い当たる判断材料をことごとく栗栖部長にふさがれる。まぁこれで分かればそもそも俺がいらない話ではあるだろう。
状況から本物を見つけるのは難しいのが分かった。
故に判断基準はシンデレラの行動に移る。それぞれの人物像や行動から、本物に該当するであろう人物を推理するしかない。
したがって、俺としては今回の話の流れの中で、唯一理解できない点を突っ込むしかなくなる。
「そもそも何でAIRIって人物は、自分の推しのアイドルを助けたくせにすぐいなくなったんだ?」




